Enter               (1997)                                            

                                                                                         

74点                                         

1.Restless

2.Enter

3.Pearls Of Light

4.Deep Within

5.Gatekeeper

6.Grace

7.Blooded

8.Candles


オランダ出身のゴシックメタルバンドの1stフルアルバム。

ゴシックメタルといえば憂鬱とした暗い曲調にシンセの音を強調させて女性ボーカル、あるいは男性ボーカルのデス声を交えて淡々と曲を繰り広げていくメタルの中でも少しマニアックなジャンルです。

そんな中でこのマニアックな音楽を一躍メジャーシーンまで飛躍させたのがNightwishやEvanescence、そして今回ご紹介するWithin temptationなんですね。このWithin temptationは2ndフルアルバム「Mother Earth」が母国オランダのヒットチャートにて1年以上トップ10にランクインし続け、ヨーロッパ各国でのアルバム発売が決定となる等大躍進を遂げています。日本にも2006年に開かれたメタルの祭典LOUD PARKへの参加で初来日を果たしており、その際に女性ボーカルのシャロンが披露した衣装であるドレスの裾を持ってヘドバンする姿はここ日本にも強烈なインパクトを残していったそうな(笑)

ではこのWithin temptationの特筆すべき特徴は何かというとまずは何と言ってもフィーメイルボーカルであるシャロンの魅力的な声にあるでしょう。「ナイチンゲールの声」と評されるほどの透き通ったソプラノボイスは天上の天女の如き美しさで、これだけで他のバンドと差をつけられるような強力な武器となっています。また、クサメロとまではいかない物のフックのある美しいメロディーを作る事が出来るメロディーセンスも抜群です。

今回レビューするこのアルバムは彼らの1stアルバムとなっていますが、この頃はまだどこにでもありげな悪く言うと没個性なお手本通りのゴシックメタルを展開しています。

#1.Restlessは冷たい鬱蒼としたピアノの音から始まり儚いシャロンの透き通ったボーカルと共に淡々と展開していく曲。特に間奏のキーボードとギターソロの部分はゴシックメタル特有の美意識が感じられますね。

#2.Enterはドアを開く音の後に独特のドラムのリズムが聞け、男性のデス気味のボーカルが聞ける曲。途中からちゃんとシャロンのボーカルも参加しますし、これも王道ゴシックメタルそのものといった所。最後は独特のリズムを刻むドラムが数度繰り返され終了です。#4.Deep Withinは少し重めのギターリフから始まり、男性デスボーカルが迎える一曲。暗くスリリングな音使いのキーボードが印象的です。

#5.Gatekeeperは荘厳なキーボード、コーラスが聞ける曲で途中からは重めのギターリフも登場します。ただ、曲の尺が6分半ほどなのに対して、最初の男性デスボーカルが入るまで3分以上かかるので結構じれったいです(苦笑)#8.Candlesも冷たいピアノの音を活かしたっゴシックメタルらしい曲。この曲はシャロンのソプラノボイスが結構長めな尺の曲というのもあって存分に堪能できる曲になっています。

普通のゴシックメタルとして見ればそこそこのレベルなのでしょうが、彼らのこれ以降のアルバムを先に聞いてしまった管理人にとっては至極物足りなさを感じます。真性ゴシッカ―の方にとってはむしろこのアルバムが一番とっつきやすいぐらいではないかと思いますが、特段ゴシックメタルファンでもない方は彼らのアルバムを全て聞いた後に気が向いたら聞くぐらいでもいいと思います。この時点では良くも悪くもマニア向けの一般的なゴシックメタルという所です。

彼らの本領発揮は次作からですから・・・

 

 

Mother Earth               (2000)                                         

                                                             

95点                                         

1.Mother Earth

2.Ice Queen

3.Our Farewell

4.Caged

5.The Promise

6.Never Ending Story

7.Deceiver of Fools

8.Intro

9.Dark Wings

10.In Perfect Harmonie


オランダ出身のゴシックメタルバンドの2ndフルアルバム。

上記の1stアルバムEnterのレビューで書いた通りこのアルバムが彼らの出世作となり、躍進のきっかけとなったアルバムです。国内のヒットチャートで1年以上トップ10に居座るなんて今の日本で置き換えるととても考えられない状況ですが、このアルバムがそれほど支持された理由はゴシックメタルはおろかメタルといったジャンルの壁を超えたポピュラリティーのある作風にあるでしょうね。

前作ではいわゆる”普通の”ゴシックメタルだった訳ですが、今作はそんな方向性をなんと180度転換。男性デスボーカルを一切廃し、ヨーロッパの民族音楽を思わせるようなキャッチーなメロディーとまさに天上の楽園を思わせるようなポジティブで聖なる雰囲気を醸し出した音楽はもはやヒーリングミュージックというレベル。王道のゴシックメタルとしての魅力はおろか、メタラーが渇望するようなメタル特有のダイナミズムそのものはほとんど無くなっているものの、音楽そのものとしては非常に美しく高貴な物になっています。

#1.Mother Earthから早速のキラーチューンです。民謡調の笛の音とシンセ、クワイアからギターが切り込みサビでは壮大で神聖かつフックあるメロディーを聞かせてくれます。間奏ではこれまた荘厳なコーラス、クワイアパートも待っています。メロディーはもちろんともかくキーボードやシンセの音使いやアレンジが非常に上手く管理人はこの時点でもう悶絶モノです。

#2.Ice Queenは美しいシンセが荘厳な雰囲気を演出するもギターリフが切り込むと途端にPOPでメロディアスになるミドルナンバー。サビメロもキャッチーで間奏でのピアノをバックに歌うシャロンのボーカルも美しく、メタルというよりも普通のPOPとして良質な曲だと思います。#3.Our Farewellはキーボードとシンフォニックなアレンジが光る穏やかなバラード。これもシャロンの透明感のあるボーカルがよく活かされており、メロディーも甘くフックあるメロディーで何か映画音楽として使っても全然違和感がなさそうです。

#4.Cagedはこれまた民謡調の笛の音から始まるミドルテンポナンバー。ギターリフは結構重めでシャロンもちょっと力強い歌い方をしており、途中で挿入される神聖なクワイアもいい感じです。#7.Deceiver of Foolsはいきなり荘厳で神聖なクワイアが出迎えた後に重ね録りをしたシャロンのボーカルが儚いメロディーを歌い上げるも、ギターリフも登場しクワイアと共にキャッチーで勇壮なメロディーを聞かせてくれます。このアルバムでも特に劇的な曲ですね。

#10.In Perfect Harmonieは大自然の中にいるような雰囲気を感じさせてくれる壮大で優雅なバラード。笛の音やアコギはもちろんシンフォックなアレンジに加えて、シャロンのボーカルはこういう曲に物凄くよく合うということもあってこれもメタルというよりPOPとして非常に良い曲だと思いますね。

シンフォニックアレンジも隙がなく、シャロンのボーカルもこういった路線に合っていますし、良質な洋楽POPとしても楽しめる名盤です。管理人もメタルは好きですが、こういうPOPだったりヒーリングミュージックだったりというのも好きなのでこのアルバムの路線は何の抵抗感もありませんでしたし、むしろ大好きです。

シンフォニックメタルファンは多分ツボにハマるようなアレンジが施されているでしょうからもちろんのこと、普段メタルを全く聞かないという人にもその聞きやすさから自信をもってオススメできるアルバムです。逆に真性ゴシッカ―の方やメタルと言えば重いギターリフやテクニカルなギターソロ、高速ドラミング、ハイトーンシャウト、グロウルボイスなんかがあってなんぼみたいな方にはちょっと好みからズレているかもしれません。

 

 

The Silent Force                       (2004)                                           

                                  

100点                                         

1.Intro

2.See Who I Am

3.Jillian(I'd Give my heart)

4.Stand my Ground

5.Pale

6.Forsaken

7.Angels

8.Memories

9.Aquarius

10.It's The Fear

11.Somewhere


オランダのゴシックメタルバンドの3rdフルアルバム。

前作のアルバムで大いに注目を集めた彼らですがこの3rdフルアルバムまでの発売はかなり長い年数が空いています。とはいうもののその間にシングルは年に1回程のペースでリリースしており、この間は主にツアーやライブに精を出していた模様です。

そして、リリースされた今回のアルバムは前作のシンフォニックな路線やアレンジもさらにスケールアップしており、作風も自分たちはゴシックメタルバンドであるという原点に立ち返ったかのように前作のポジディブな作風から一転して、ダークでシリアスな作風に回帰しています。しかし、ここで聞けるのは初期のマニアックなゴシックメタルの面影は一切ない、メジャーフィールドでも充分通用するような洗練された荘厳で美しいシンフォニックゴシックメタルです。

#1.Introは重厚なクワイアとシンセ、シャロンの澄んだボーカルがダークな雰囲気を醸し出すインスト。この時点で期待感を抱かずにはいられません。そして、早速のキラーチューンである重厚なシンフォニックゴシック全開なミディアムチューン#2.See Who I Amへ。最初の重厚なクワイアがまず耳を惹きますし、メロディーもダークでキャッチー、シンセやシンフォニックアレンジによって演出される神秘的な雰囲気とシンフォニックゴシックの理想形が詰まっています。

続く#3.Jillian(I'd Give My Heart)も重厚なクワイアから幕を開けるミディアムチューン。このアルバムでも特にキャッチーなサビメロが印象深く、最後のシャロンの澄み切った高音ソプラノボイスも聞いていて非常に気持ちよくなります。これも文句なしのキラーチューンです。#4.Stand my Grundは彼らの代表曲とも言えるシンフォニックチューン。儚い旋律を奏でる笛のような音から重いリフとクワイアが仄暗いダークな世界へ誘います。シングルとしてリリースされただけあって展開もわかりやすく、サビのキャッチーかつ儚くも切ないメロディーは充分な破壊力がありますね。全体的に彼らの曲でもギターリフを特に押し出しています。

#5.Paleは儚さを持ったシンフォニックバラード。前作でみせたシンフォニックバラードがわりと優しく穏やかな曲調だったのに対して、今回はアルバムのカラーに合わせた荘厳でダークな雰囲気になっています。#6.Forsakenはシャロンの細いボーカルから幕を開けるシンフォニックチューン。これはサビが哀愁を持ったキャッチーさを持っていて管理人的にかなりツボなキラーチューンです。

#8.Memoriesはこのアルバムでも特に人気の高い劇的なシンフォニックバラード。サビメロの荘厳ながらで陰りがありながらも若干の甘さを感じさせるメロディーは本当に切ない気分にさせてくれますね。#9.Aquariusは悲哀に満ちたシンフォニックな出だしから哀愁を持ったメロディーをギターリフと奏でるシンフォンックチューン。これも哀愁のサビメロとサビメロの後ろのクワイアがまたツボで仕方ありません(笑)

ラストの#11.Somewhereは静かで穏やかな雰囲気を持ったバラード。これも前作のラストであるバラードのIn Perfect Harmonieとは違った高貴で暗い雰囲気になっていますが、管理人的にはどちらも大好きです(笑)

ともかく全編的に隙のないアルバムです。重厚なシンフォニックゴシックチューンはもちろんですがバラードもいい曲が揃っておりますし、前作には欠けていたメタルとしての良さというのもちゃんと備わっています。管理人的にはシンフォニックゴシックはおろか広義の意味でのシンフォニックメタルの理想形と言える音が詰まった文句なしに墓の中まで持っていきたい名盤ですね。

彼らの人気がこのアルバムで確固たるものになったのも納得です。

 

 

The Heart of  Everything                         (2007)                                                                      

 

93点                                         

1.The Howling

2.What Have You Done

3.Frozen

4.Our Solemm Hour

5.The Heart of Everything

6.Hand of Sorrow

7.The Cross

8.Final Destination

9.All I Need

10.The Truth Beneath The Rose

11.Forgiven

 

 

オランダのゴシックメタルバンドの4thフルアルバム。

前作は完成された非の打ちどころのないシンフォニックゴシックメタルでその存在感を確固たるものにしたWithin Temptationですが、ボーカルであるシャロンが2005年に夫で同バンドのギタリストでもあるロバートとの間に第一子となる子供を出産。しかし、2006年にはLOUD PARKにて初の来日公演を果たす等出産後も積極的な活動を展開します。そして翌年にリリースとなったのが今回のアルバムです。

今作も基本的には前作の路線を踏襲したダークで洗練されたシンフォニックゴシックメタルなアルバムになっていますが、前作でもやや見え隠れしていたEvanescence的な要素が増大。クリーンな男性ボーカルが登場する曲もあったりと少し違ったアプローチを取っている曲もありますし、前作に少し現代的なモダンさを取り入れたような作風に変化していますね。

#1.The Howllingはシャロンの綺麗なハミングから始まるも一気にクワイアとへヴィなギターリフが壮大さを演出。シャロンの低い声と普通の声を重ね録りしたボーカルパート等は、やはりEvanescenceの要素を感じさせます。静寂なパートから一気に盛り上がりを見せたりと起伏も激しく、メロディーもキャッチーですね。#2.What Have You Doneは出だしこそシャロンのボーカルが儚く歌い上げるもすぐさまクリーンな男性ボーカルが登場。ヒップホップ調に歌う男性ボーカルパートもありますが、基本的にシャロンを含めた2人のボーカルが絡み合いながら劇的に展開していきます。これもEvanescenceっぽい曲ですね。

#4.Our Solemn Hourはいきなりサビから始まりますが、このサビの荘厳かつフックあるメロディーを歌うクワイアが非常に印象的な曲です。このメロディーがまた凄く耳に残りますし、アルバム内でもこの曲が一番前作を忠実に踏襲していますね。シャロンのボーカルも籠ったように加工されたボーカルに加えて、籠ったような男性の語りのも聞けます。アルバムのタイトルチューンである#5.The Heart of Everythingはへヴィなリフとシャロンのソプラノボイスから幕を開けますが、ボーカルに入るとシャロンも低い声を活かした力強い声を披露しています。これもサビメロがめちゃくちゃ哀愁染みたフックがありますし、もろに管理人の好きなタイプの曲ですね。曲から終始漂う幽玄な雰囲気も最高です。

#6.Hand Of  Sorrowは叙情的なピアノからヴァイオリンとストリングスがいきなり劇的に導入され、この時点でシンフォニックメタルファンにはたまらない曲でしょうね。サビメロもキャッチーですし、豪華絢爛なオーケストレーションとクワイアも終始シャロンのボーカル、ギターリフと絶妙な絡みを見せています。#7.Crossはこれまた加工されたシャロンの特徴的なボーカルが随所で聞ける曲。サビメロはやはり壮大でフックあるメロディーを聞かせてくれますし、最後のサビメロの裏ではシャロンのボーカルが幾重にも重なっていてかなりドラマティックな展開を見せています。

#9.All I Needは叙情的なメロディーが聞ける泣きのバラードです。彼女らのバラードにいつも言えることですが、これも映画音楽に使えそうなぐらいロマンティックで劇的な曲になっています。管理人的には特にサビメロが本当にロマンティックで大好きですね。ラストのしんしんとシャロンのボーカルが歌った後に再びオーケストレーション全開でサビメロを歌う所も鳥肌物です。#10.The Truth Beneath Roseは7分弱と今回のアルバムでは最も長い曲となるドラマティックなシンフォニックメタルチューン。これも壮大なクワイアとオーケストレーションがこれでもかと使われていますし、サビメロも若干哀愁を持ったキャッチーさがあっていいですね。途中ではお約束のごとくボーカルが儚く歌う静寂パートがありますがここがまた凄く神々しい雰囲気を放っていますね。展開なんかもベタですが、その分安心して聞けます(笑)

前作でもはやこの手の頂点を極めてしまったかのように思われた彼女たちですが、少し変わった新機軸を投入することによりギリギリの線でマンネリ化を防ぐことに成功。基本路線はそこまでズラしていないため前作からのファンも大方引き続き満足させるという優れたバランス感覚を発揮していますね。なおかつ2ndフルアルバム以降はクオリティやメロディーの質も全く落ちていない所がまた恐ろしいです。

管理人的には前作が完璧すぎたので当然前作の方が好きなんですが、このアルバムも引き続き高いレベルを見せつけていますので前作が気に入った方やWithin Temptationを初めて聞くという方にも自信を持ってオススメできます。

 

 
The Unforgiving

The Unforgiving                      (2011)                                            

                                                     

91点                                         

1.Why Not Me

2.Shot In The Dark

3.In The Middle Of The Night

4.Faster

5.Fir And Ice

6.Iron

7.Where Is The Edge

8.Sinead

9.Lost

10.Murder

11.A Demon's Fate

12.Stairway to the Skies

 

 

 
オランダのゴシックメタルバンドの5thフルアルバム。

これまでの作品でもはや「シンフォニックゴシック」というジャンルそのものを極めてしまったとも言える作品をリリースし続けたWithin temptation。しかし、ボーカルのシャロンはその後も第一子に続いて二人の子供を授かることになり、夫と共に子育てとミュージシャン活動を引き続きこれまで以上に大変な状況で継続していくことになります。という訳で再び4年という長い期間を設けられて、届けられた今回の作品はジャケットの絵にあるあらかじめ作られていたオリジナル漫画に沿って作られたアルバムという事で今までとはだいぶ趣の違う(?)手法がとられています。

そして、気になる作風もここにきて大きく方向転換。一言で表すなら「A級シンフォニックゴシックメタル」から「ゴシック風商業ハードロックないしロック」といったらいいのでしょうか?という明らかに賛否の別れそうな作風にシフトしています。しかし、他のレビューサイトでレビュアーさんがこの作品を酷評ないしイマイチと評じてしているのは管理人が見る限りですがあまり見受けられません。そう、彼らは例え作風が変わってもその抜群のメロディーセンスは相変わらず健在。加えて今回の作品は確かにコテコテなゴシックさはないものの、管理人の意見としてはこの今時さが非常に「クールでカッコいい」んです。という訳で、方向を変えても従来のファンすらそのクオリティで唸らせてしまうという一見すると単純明快。しかし、一番難しい方法を見事にやってのけたと言えるでしょう。

シリアスなストリングスと女性の語りによるインスト#1.Why Not Meから早速のキラーチューンと言える#2.Short In The Darkへ。壮大なクワイアが聞こえるも打ち込みによるサウンドがすぐに「今時なロック」的モダンさを出し、淡々と展開しますがサビになると一気に爆発し哀愁とフックに溢れまくったメロディーを聞かせてくれます。バッキングのギターの音はやや控えめで、シンセ等の打ち込みとドラムがメインとなっていますし、何と間奏ではギターソロも登場。しかし、このサビメロの破壊力、モダンな現代さと若干のゴシック風味が絶妙なバランスで路線は違えど「いい!!」といえる説得力に溢れていますね。#3.In The Middle Of The Nightはモダンでへヴィなギターリフを強調させた後にゴージャスな質感のシンセとシャロンのシンガロングで走り出す一曲。彼らの曲にしてはいやに熱気があってアツイ感じの曲になっていますが、こちらもサビメロは非常にキャッチーでカッコいい曲になっています。しかし、間では荘厳なクワイアパートがあったりとシンフォニックな面も決して忘れていない節がありますね。

#4.Fasterはモダンなリフで進むキャッチーなロックナンバー。ゴシック風味もほとんどなくもはやメタルというより普通にキャッチーなハードロックというような曲になっていますが、タイトルを連呼するサビがかなりのインパクトを放っています。メロディー自体はこちらも非常にいいですね。#5.Fire And Iceは重厚で不安感をあおるストリングスから始まるバラード。しかし、暗さを感じるのは最初だけでその後はピアノとシンセでしっとりとシャロンが歌い上げ、途中からはようやくバンドサウンドやクワイアも入りドラマティックに展開していきます。こちらはいつも通りの彼らというバラードで、安定した路線だけにこのスケール感がやっぱりいいですね〜。

#6.Ironは再びギターを主体にしたロックナンバーですがシンセの使い方がまるでゲームのRPGかというぐらいに壮大で男らしいアツさがありますし、サビメロも中々の哀愁を持ったキャッチーさがあってこれも割とツボな感じですね。ギターソロもやけにピロピロしていますし、、ラストのサビは転調というのもいい展開です(笑)こういう曲を聞くだけでも今作はゴシックメタル的カタルシスよりロック本来の熱さというかそういうものを彼らなりに追求しているのがよくわかりますね。#8.Sineadは透明感のあるシンセとシャロンのボーカルが幕を開け、打ち込みとストリングスで徐々に盛り上がりサビでゴージャスなシンセとキャッチーなメロディーが炸裂する曲で、これも今作らしいアッパーさがいい具合に決まっていてカッコいいですね〜。打ち込みやシンセが目立ちすぎていて、楽器隊の音もかなり控えめともはや普通の洋楽POPSと言えなくもない雰囲気ですが、今作らしく「いいもんはいい」ということです(苦笑)

#9.Lostはアコギから物悲しく幕を開けるバラードで、サビでは叙情的なシンセをバックにこれまた美しいメロディーを歌い上げています。5曲目のバラードに負けず劣らずのドラマティックさやスケール感がありますし、シャロンのソウルフルな歌唱、アコギによるギターソロも大きな聞きどころとなっていますね。#11.A Demon's Fateは打ち込みシンセから重厚なストリングス、加工されたシャロンの声とへヴィなギターリフで走り出すロック曲で、こちらもサビがキャッチーかつ若干の哀愁が感じられていい感じです。間奏では今作では珍しいシャロンのソプラノボイスも一瞬顔を出します。

作風はもちろん美しいソプラノボイスが魅力だったシャロンも曲に合わせてかややワイルドな歌い方になっていたりと正直なところこれまでの面影がほとんどといっていいほどないため、賛否両論ありそうなのもまぁ、やむなしかなという印象ですね。しかし、それだけで聞かないというのもあまりにもったいない作品です。ゴシックメタルという観点ではなく、普通にメジャーシーンを意識したPOPS、ロックとして聞くと前述のとおり非常に質が高いもんですから困ったものです(苦笑)

ただ、冒頭に触れたとおり思ったほど批判を見受けないのはやはり「メロディーセンス」という一本芯の通った強力な武器が彼らに備わっていたことを証明する結果という事でしょう。この作品からファンになるという人もたくさんでできそうな新たなWithin Temptation像を作り上げた作品として。また、これだけキャリアを重ねながら一切失敗を恐れないその挑戦心とそれに付随するクオリティを称えて。前作までの路線も捨てがたいですが、この路線も管理人は大いに歓迎したい所です。

 
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