Symhpony X            (1994)                                            

81点                                         

1.Into The Dementia

2.The Raging Season

3.Premonition

4.Masquerade

5.Absinthe And Rue

6.Shades Of Grey

7.Tauting The Notorious

8.Rapture or Pain

9.Thorns Of Sorrow

10.A Lesson Before Dying


アメリカ出身のネオクラシカルメタルバンドによる1stフルアルバム。

アメリカのメタルと言えば叙情的で繊細な曲作りやメロディーを得意とするヨーロピアンメタルとは全く正反対で、スラッシュメタルやメタルコア、デスメタル、ニューメタルがメインストリームであるようにアグレッションや荒々しさ、ノリの良さが重要視されるような部分が大きく、それはアメリカという国家のイメージそのものを表しているようにも思えます。しかし、このSymphony Xはそのアメリカのバンドらしさを微塵も感じさせないバンドで、その音楽性は母国アメリカよりもここ日本で熱狂的なファンによって受け入れられ、それから徐々にヨーロッパはもちろん本国であるアメリカまで名前を広めていったのです。

彼らの音楽の特徴としてはクラシック音楽に出てきそうなフレーズをテクニカルなバンドサウンドで表現するイングウェイタイプのネオクラメタルスタイルを基調にプログレッシブな面も導入しており、変拍子を多用した複雑で高度な演奏と練られた曲展開が持ち味です。また楽曲からは神秘的でミステリアス、陰りのあるダークさが漂っており、後に彼らのスタイルを真似た多くのフォロワーを生むことになります。

さて、このアルバムがリリースされた時のアメリカではメタルも80年代ほどの勢いを失い、デスメタルがジャンルとして産声を上げ始めた頃。そう考えるとある意味時代錯誤はなはだしい訳なんですが(苦笑)、本国では当然注目させることはなく、何故かこれが当時イングウェイが頻繁に来日公演をするぐらいネオクラメタルが歓迎されていた日本で、全くの無名だった彼らは脚光を浴びることとなりました。この頃はボーカルも次作以降でフロントマンを務めているラッセル・アレンではなく初代シンガーのロッド・タイラーが務めています。

#1.Into The Dementiaはミステリアスなキーボードの音とテクニカルな速弾きギターが聞けるインストでそこからザクザクのギターリフとテクニカルなドラムが切り込む#2.The Ragining Seasonへ。サビメロを始めとしたメロディーも全体的にキャッチーです。間奏ではミステリアスで妖しいコーラスの後にかなり変態的なギターソロが聞けますが、その裏でベースもかなりすごいことになっています(笑)

#.3Premonitionは神秘的で美しいキーボードの音から始まる曲で、これもサビメロの妖しい雰囲気とコーラスがいい感じです。しかし、管理人的にツボなのがコーラスと共に哀愁メロディーをボーカルが魂を絞り出すように歌うギターソロ直前の間奏部分ですね。#4.Masqueradeは今作でも最もわかりやすいネオクラチューンで随一のキラーチューンでしょうね。いきなりいかにもネオクラなクラシカルなメロディーを奏でるギターから幕を開ける曲で、パイプオルガン風のキーボードの音とコーラスの後にサビで若干疾走する展開と言いネオクラファンにはたまらない曲になっていると思います。管理人もこういった曲は大好きです。

#5.Absinthe And Rueはキラキラのキーボードとへヴィなギターリフから始まる曲でそこからは荘厳なキーボードを活かした空間の広がりがある世界観を見せてくれます。これもサビメロの裏のパイプオルガン風のキーボードが好き物にはたまらないでしょうね。間奏では目まぐるしく入れ替わる長いテクニカルなギターソロ、ベースソロが聞けます。#6.Shades of Greyは哀愁メロディーを奏でるシンセとメロディーがたまらないバラード。このメロディーがまた哀愁好きの管理人に見事クリーンヒットするんですよね〜(笑)それとは相反するような優しく穏やかなサビメロ印象的ですし、ギターソロがテクニカルながらも泣きのメロディーを奏でまくっているのもまたニクイところです。

#9.Thorns Of Sorrowはへヴィなギターリフとパイプオルガン風のキーボードが掛け合いを見せた後に疾走するネオクラ風の疾走曲。これはほぼ疾走だけにこのアルバムの音質の軽さが浮き彫りになりますね・・・曲は良いだけに少々残念です。

ラストの#10.A Lesson Before Dyingは11分越えのプログレッシブな大作です。穏やかで哀愁を持ったメロディーのアコギとボーカルから始まり、ザクザクしたギターリフとクラシカルなキーボードの音と共にバンドサウンドが全開になります。サビメロはフックあるキャッチーなメロディーも聞けますし、裏のキーボードも荘厳さを出していますね。サビ後のドラマティックな展開を見せるキーボードとボーカルメロディーの後は長い間奏に突入し、楽器隊の見せ場と言わんばかりに様々なソロを始めとした変態的でテクニカルなプレイを披露しています。確かに凄まじいんですが、ちょっとここが人によってはダレてしまうかもしれません。しかし、全体的に展開の上手さは見事です。

自主制作で作成された故かともかく音質が軽すぎるのと(特にドラムの軽さはかなり厳しい・・・)、ロッド・タイラーのボーカルが次作以降のラッセル・アレンのボーカルに比べるとかなり不安定というか妙な細さがあってイマイチ管理人は馴染めないんですが、曲自体はこの頃から彼らの持ち味というのが荒削りながらしっかり出ていますね。むしろ、これ以降の彼らよりも作風自体は比較的ストレートなので結構聞きやすいかもしれません。

現在のメンバーや環境で再録すれば管理人的には充分名盤になるポテンシャルを秘めているんじゃないかと思います(まぁ、Masqueredeに関してはなんだかんだで後に再録してくれましたが・・・)

The Damnation Game            (1995)                                          

87点                                         

1.The Damnation Game

2.Dressed to kill

3.The Edge of Forever

4.Savage Curtain

5.Whispers

6.The Haunting

7.Secrets

8.A Whinter's Dream-Prelude(Part 1)

9.A Whinter's Dream -The Ascention(Part 2)


アメリカ出身のネオクラシカルメタルバンドによる2ndフルアルバム。

今アルバムからフロントマンに現在までボーカルを務めているラッセル・アレンが加わります。このラッセルは力強くも感情や情念を上手く表現するパワフルな歌唱を得意としており、管理人的にメタルのシンガーでもトップクラスに好きなボーカルの一人です。初参加となるこのアルバムでもパワフルな歌唱を披露してくれているため、ボーカルにやや難のあった前作と比べるとバンド自体が飛躍的にレベルアップしたように感じますし、もう一つの問題だったスカスカで劣悪な音質もまだやや軽いもののかなり向上しています。

作風自体は前作をよりレベルアップさせた音楽になっており順当な進歩を遂げていますね。

#1.The Damination Gameはこのアルバムでも一番のキラーチューンと呼べるネオクラ疾走曲です。いきなりピロピロのネオクラ全開なギターと荘厳なキーボードが聞け、ベースソロを挟んだ後にキラキラなキーボードと共に疾走開始。この時点で多くのネオクラファンやメロスパーはノックアウトでしょう(笑)サビの前ではテンポが落ちますが、サビに入ると再び疾走を再開します。彼ららしいコーラスもかなり効果的に使われていますし、ギターソロやキーボードソロも変態的なソロの掛け合いを見せたりとのっけから飛ばしています。

#2.Dressed to Killもへヴィなリフとミステリアスなキーボードで始まる曲で、サビもキャッチーなんですがこの曲のいい所は2回目のサビ以降はサビが転調する所ですね。この転調部分は本当にラッセルのボーカルが映えます。間奏のネオクラらしいギターソロとキーボードの掛け合いも非常に綺麗なメロディーを奏でていますね。#3.The Edge of Foreverは静かで空間の広がりを見せるギターの音とキーボードの音から始まる曲で、緩急をつけた曲展開はいかにもプログレメタルな空気が流れています。ボーカルも妖しいメロディーを囁くように歌い始めますが、その後へヴィなリフとテクニカルなドラム、ピロピロのキーボードと共に若干疾走します。その後に哀愁を持った妖しさを持つメロディーを歌うボーカルが管理人的にはとてもツボです。何気に8分以上ありこのアルバムでは一番長い曲ですが、全く飽きずに聞けますね。

#5.Whispersは幻想的な哀愁を持ったいかにもプログレにありそうなバラード。これもサビの哀愁メロディーはもちろんギターソロのメロディーも哀愁を放ちまくっていますね。間奏のドラマティックさを演出するコーラスやピロピロで劇的なギターソロも管理人の好みを的確に突いてきますし、隙がありません。#7.Secretsは荘厳なキーボードと一定のリズムを刻むベース、ドラムから始まりザクザクのギターリフから始まる曲。サビメロはあまり印象に残らないものの、ミステリアスで神秘的なキーボードが聞ける彼ららしい曲のため雰囲気自体は好みです。

#8.A Whinter's Dream-Prelude(Part 1)は彼ららしからぬ穏やかなメロディーが聞ける幻想的なバラード。ちょっとロマンティックで淡い甘さがあり、ダークな曲調を得意とする彼らにしては異色な感じですが終始幻想的な雰囲気を漂わせており、管理人的にはこういう曲も全然アリというか大好きです。そこからつながる様に#9.A Whinter's Dream-The Ascention(Part 2)へ。前の曲から一転して妖しいキーボードの音がダークさを演出し、最初からザクザクなリフとテクニカルなギターソロも飛び出します。 サビメロも耳に残るキャッチーさがあり、彼ららしいミステリアスな空気が終始漂っています。

前作に比べるとプログレ要素がやや強まっているものの、メロディー自体は相変わらずキャッチーで独特の雰囲気を持っているので退屈になることなく展開美を楽しむことができますね。また、テクニカルさやネオクラな面に注目が集まる彼らですが隠れた強みとしてバラードの出来が非常にいいため、そこも評価を上げている大きなポイントになっています。

管理人的に彼らのアルバムは次作の3rdフルアルバムが一番好きなんですが、このアルバムも良曲揃いなので特にネオクラファンは是非聞いていただきたいアルバムですし、このダークで幻想的な雰囲気はヴィジュアル系に若干通じるものがあると思うのでヴィジュアル系ファンにもオススメです。

The Diving Wings        of Tragedy(1996)                                                    

98点

1.Of Sins and Shadows

2.Sea of Lies

3.Out of the Ashes

4.The Accolade

5.Pharaoh

6.The Eyes of Medusa

7.The Witching Hour

8.The Divine Wings of Tragedy

9.Candlelight Fantasia


アメリカ出身のネオクラシカルメタルバンドによる3rdフルアルバム。

今作は彼らの中でも今だ最高傑作との呼び声高く、ネオクラシカルメタルの名盤としてたびたび名前が挙がるほどネオクラファンからも愛されているアルバムです。

音質もようやく問題のないレベルまで向上していますが、今作の大きな特徴と言えばPANTERAの影響と思われるへヴィなギターリフでしょうか。今までは程よい軽さのあったリフが、PANTERAの特徴であるギラついた本格的なへヴィさを身に着けたリフに変化しております。しかし、そこはSymphony X。リフはPANTERAっぽさがあっても彼らのミステリアスでダークなメロディーラインや空気感の演出、テクニカルかつプログレッシブな演奏と曲作りはよりレベルアップしており、その二つが絶妙に絡み合った結果凄まじいクオリティーを生み出すことに成功しました。

#1.Of Sins and Shadowsは管理人が多分あらゆるメタルの曲でも一番好きな曲と言えるほどのキラーチューンです。早速今作の特徴であるへヴィなリフが小さく聞こえた後に、本格的なへヴィリフが登場。ミステリアスでダークなキーボードがそれに覆いかぶさるように聞こえ、もう彼らの独自の個性がのっけから炸裂しています。展開もわかりやすく、サビメロもキャッチーな哀愁メロディー。間奏も相変わらずバカテクなギターソロが聞けます。随所で出てくるコーラスもいい感じで、ラストのサビはこのコーラスが転調してあの哀愁サビメロを歌うという反則わざを披露(笑)で、このラストのサビの裏のベースが管理人的にはたまらない。文句の付け様がない名曲です。

#2.Sea of Liesはミステリアスで神秘的なキーボードの後に超絶なベースソロが飛び出し、へヴィなリフが若干の疾走を見せる曲。この曲は最初のベースソロを始め、印象に残るベースラインが目白押しで本当にベースが大活躍していますね。メロディーも彼ららしいミステリアスな空気満載ですし、間奏ではギターとキーボードのテクニカルなソロバトルもあります。#3.Out of The Ashesは彼らの代表曲にしてこのアルバムでも多分一番人気であるキラーチューン。彼らにしてはわかりやすい疾走ネオクラチューンで、曲も4分足らずとちょうどいいコンパクトな長さ。キラキラなキーボードとへヴィなリフと共に疾走する展開は多くのネオクラファンが大好物にしている音でしょう(笑)ミステリアスなコーラスやサビメロの陰のあるキャッチーさ、テクニカルな楽器隊の見せ場とも言える間奏と短いながら彼らの魅力を凝縮したような曲ですね。

#4.The Accoladeはアコギとヨーロッパの民謡風なメロディーを奏でるキーボードから幕を開ける9分越えの大作。この出だしの浮遊感のある部分はプログレらしいですね。そして、キラキラした幻想的なキーボードとともに泣きまくりのギターとへヴィなリフも登場し、サビメロも幻想的で儚いメロディーを聞かせてくれます。間奏もテクニカルなソロを始めドラマティックに展開していき、再びあのサビメロがドラマティックに登場。その後はパイプオルガン風のキーボードをバックに儚く歌い上げるボーカルが神聖さを感じさせます。そして最後もサビメロが聞けて終了です。キーボードがいろんな音を出していますし、展開美も見事ですね。#7.The Witching Hourはこれもクラシカルなメロディーを演奏するギターとキラキラキーボードの絡み合いが聞けるネオクラファン大喜びの一曲。このアルバムの他のキラーチューンに比べると少しメロディーが弱いような気がするもののミステリアスな音使いやメロディーはやはり彼ららしいですね。

アルバムのタイトルチューンである#8.The Divine Wings of Tragedyは何と20分越えの超大作。かなり気合が入っていますね(笑)まるで教会にいるかのような荘厳でクラシカルなクワイアから幕を開け、リズミカルなリフを刻むギターと不穏で美しいキーボードの音で徐々に盛り上がってきますが、ボーカルが入るまで5分かかります(苦笑)その後も様々なアプローチを見せるめくるめく曲展開を見せていきますが、正直かなり凝った作りになっており、プログレやクラシック等で長尺曲にある程度耐性がある人でないと聞きとおすのは少し辛いかもしれませんね。展開自体も非常に作りこまれてはいますが、いかんせん長過ぎるため良さを理解するのはある程度聞きこまないと難しいと思います。

#9.Candlelight Fantasiaは哀愁の泣きメロを持ったバラード。タイトル通りろうそくが表す様々な儚さを表したようなバラードで、これもメロディーが哀愁好きの管理人のツボを突きまくります。展開も彼ららしくプログレッシブに展開していますが、何と言ってもこの悲壮感や儚さをうまく綺麗に表現するラッセルのボーカルがもう好き過ぎてたまりません(笑)

彼らの個性を集約したかのような濃密で独自性の強い一枚になっていますね。1st、2ndと二つのアルバムを出して歩んできた彼らの音楽の個性はひとまずこのアルバムにて完全な形で完成したと言っていいでしょう。ネオクラファンは必聴レベルの名盤ですし、メタル全体として見てもこれほどの名盤はそうそうお目にかかれるものではないと思いますので彼らに興味を持った方はまずこのアルバムから入って頂くのが一番かと思います。

管理人もこのアルバムは墓の中まで持っていきたい名盤と呼べるぐらい大好きなアルバムです。

Twilight in Olympus         (1998)                                            

91点                                         

1.Smoke and Mirrors

2.Church of the Machine

3.Sonata

4.In the Dragon's Den

5.Through the Looking Glass(Pt 1.2.3)

6.The Relic

7.Orion - The Hunter

8.Lady of the Snow


アメリカ出身のネオクラシカルメタルバンドによる4thフルアルバム。

前作のアルバムが大成功を収め、日本のみならずヨーロッパからも注目を浴び始め一気に飛躍し始めたSymphony Xですが、何とバンド結成時からのメンバーでありバンドの複雑なリズムを支えていたドラムのジェイソン・ルロが個人的な事情を理由に脱退を表明します(結局は次作でまた復帰していますが・・・)それを受けて今回はドラムにスタジオミュージシャンであるトーマス・ウォーリングなる人物が参加していますが、テクニカル極まりないSymphony Xの曲を難なく叩いているあたり、ジェイソン脱退の被害は最小限に抑えられていますね。

さて、今作も作風は相変わらずSymphony X節炸裂な一枚になっていますが、曲の尺が平均的に伸びていたり、さらに展開美を重視した部分が増えたりとよりプログレ色が濃くなっている一枚になっていますね。前作で見られたPANTERA的なへヴィなリフも今回は特に用いられておりません。

#1.Smoke and Mirrorsは一曲目ということでやはりというかネオクラファン歓喜のキラーチューンです。イントロのギターのスウィープとキーボード、ドラムがリズムを刻み、ギターリフと彼ららしい神秘的でミステリアスなキーボードが覆いかぶさるように疾走を見せます。このイントロでごはん何杯いけるだろうかというぐらいです、本当好き物にはたまらない(笑)サビメロもキャッチーですし、間奏はパイプオルガン風のキーボードが荘厳さを演出したのちにお待ちかねのキーボードとギターのソロバトルです。それぞれテクを見せつけるかのように交互にバカテクプレイを連発しています(笑)

#2.Church of the Machineは9分近くあるプログレチューンです。出だしの無機質な機械音に面喰いますが、すぐに彼ららしいキャッチーで壮大なメロディーを歌うコーラスが登場。期待感を煽るドラムとギターリフ、その裏のさり気に主張しているベースと共に少し疾走します。その間も荘厳な空気を崩さないキーボードはきっちりと存在感をアピールしており、ボーカルも登場後は変わらずスリリングな展開を見せ、冒頭のコーラスのサビへ。その展開をまた繰り返し、テクニカルなギターソロとキーボードソロへ。そしてまたサビへなだれ込みます。終始彼ららしい無駄の少ない曲展開ですし、この曲はキーボードの空気感の演出が特に秀逸です。前の曲から続くように短いインストナンバーの#3.Sonataへ。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」 第二楽章のあの有名なメロディーを拝借して、甘美なキーボードとテクニカルな泣きのギターで曲を表現しています。

#4.In the Dragon's Denは怒涛のテクニカルなドラムソロから始まる疾走曲で、今作でもわかりやすくストレートな部類の曲ですね。力強いラッセルのボーカルが印象的ですし、ミステリアスな雰囲気を持ったコーラス、サビメロの哀愁メロディーとその裏のダークで神秘的なキーボードと、いつも通りの彼らの楽曲ながらやはり管理人のツボです(笑)間奏は楽器隊のソロタイムもきっちり用意されており、特に耳を惹くのがベースソロですね〜。どんだけ速く指動いてんだという感じです(苦笑)

#5.Through the Looking Glass(Pt 1.2.3)は今作で最も長い13分越えの大作。キラキラとしたキーボードとリズムをとるベースにドラム、渋さを感じさせるギターから幕を開け、ピアノをバックに力強く歌い上げるボーカルも登場。このピアノがまた凄く甘く耳に残るメロディーなんですよね〜。コーラスと共にがなるように歌うラッセルのボーカルの後は、テクニカルな速弾きギターソロが登場。その後のミステリアスで広がりのあるシリアスな空間を演出するクラシカルなピアノがまたわかってるなという感じでいいですね。空気感はそのままにすぐバラード調になりアコギをバックに淡々と歌い上げるボーカルが聞けた後は、再びギターリフが登場。楽器隊の音を強調する形になり、ラッセルがコーラスも交えて壮大でファンタジックなメロディーを力強く歌い上げます。そして、リズミカルなベースとピアノの音から今度は彼らのトレードマークであるギターとキーボードによるソロバトルです。そして再びあのファンタジックで壮大でメロディーを歌い上げ終了です。終わり方もすっきり終わりますし、あのファンタジックなメロディーのせいか聞き終わった後は謎の爽快感がありますね(笑)展開のそれぞれに印象的なメロディーが散りばめられているため、全く飽きが来ないのは曲の構築力のある彼らの実力の証と言えるでしょう。

#8.Lady of the Snowは吹雪の中にいるような音から始まり、何と和楽器である琴の音が聞けるバラード。タイトルや曲の雰囲気からするに多分日本の雪女がモチーフなんでないかと思います。冒頭のギターのアルペジオと琴の不気味な掛け合いを始め、メロディーのセンスもどこか日本的です。その後はコーラスも登場し。寒々としたキーボードと妖しいメロディーライン、プログレッシブなギターソロと楽曲自体は彼ららしいこと極まりないんですが・・・サビメロの甘さと哀愁の合間を縫うメロディーもまたいい感じですね〜。ラストは転調するのがまたツボです。彼らの日本のファンに対するサービス曲とも言えそうですが、相変わらずバラードの出来もいいという彼らの法則に従ってか完成度の高い一曲になっています。

インパクトという点では前作に劣るものの楽曲はより洗練されてきた印象があり、曲も充実した楽曲が並んでいるため安心して聞くことができるアルバムになっていますね。少しプログレ要素が強まったせいか前作に比べるとストレートさが減退していますが、メロディーは相変わらず耳を惹く物ばかりなのでわかりにくくさは若干上がったものの、聞き難さはさほどないのがメロディーセンスもいい物を持っている彼らの強みでしょう。

V:The New Mythology Suite   (2000)                                      

90点                                         

1.Prelude

2.Evolution(The Grand Design)

3.Fallen

4.Transcendence

5.Communion And The Oracle

6.The Bird-Serpent War/Cataclysm

7.On The Breath Of Poseidon(Segue)

8.Egypt

9.The Dead Of Balance/Lacryomsa

10.Absence Of Light

11.A Fool's Paradise

12.Rediscovery(Segue)

13.Redixcovery(Part 2)-The New Mythology-


アメリカ出身のネオクラシカルメタルバンドによる5thフルアルバム。

前作をリリース後に初の来日公演を行い、それを皮切りにヨーロッパを中心に世界ツアーも開始。これまで実はライブをほとんど行っていなかったためスタジオバンドと揶揄されていましたが、蓋を開けてみれば音源通りのテクニカルなプレイに聴衆は度肝を抜かれたそうな(苦笑)そんなこんなで、いよいよ本格的に世界を舞台に羽ばたきだしたSymphony Xですが、さらなる吉報として個人的な事情を理由にバンドを脱退したドラムのジェイソン・ルロがツアー後にまさかの復帰を宣言します。しかし、失ったものもあり、1998年の来日公演後にベースのトーマス・ミラーが突如として脱退。その後に控えていたヨーロッパツアーは代役を急遽立てて行いました。そして、ツアー終了後に後任として現在までベースを務めているマイケル・レポンドが加入します。トーマス・ミラーも相当なテクニシャンではありましたが、このマイケル・レポンドも腕前的にはなんら問題ない演奏を見せているため、ファンも一安心といった所でしょう。

そして、ドタバタとしたツアーが終わった後にリリースされた今回のアルバムはジャケットから想像頂ける通りで古代のギリシャ神話やアトランティス文明をモチーフにしたコンセプトアルバムになっています。ミステリアスで神秘的な雰囲気の楽曲が多い彼らにはピッタリのテーマと言えそうですね。しかし、今作はこういったコンセプトもあってか従来から徐々に強まりつつあったプログレ路線がより鮮明になっており、彼らにストレートなネオクラチューンを期待するリスナーからはちょっと距離のあるサウンドになっています。

#1.Preludeはヴェルディの有名なレクイエム〜怒りの日〜のフレーズを彼ら流にアレンジしたインスト。出だしの叩きつけるような部分はシンセとコーラスを交えて荘厳に展開するも、合唱の部分は普通に疾走メタルになり、新鮮でカッコいいですね。そして、そこからつながる様に変拍子をキメまくりのギターと神秘的なキーボードから疾走するキラーチューンの#2.Evolution(The Grand Design)へ。ボーカルメロディーはこのアルバムのカラーに合わせてかどこかエキゾチックな雰囲気を漂わせています。コーラスを交えて引き続き疾走し、サビの彼ららしいミステリアスで哀愁漂うサビメロへ。このサビメロのフックと哀愁がまた半端ではなく、管理人は一発ノックアウトでした(笑)途中ではテンポダウンして、バラード調になりラッセルのエモ―ショナルな歌唱とパイプオルガン風のキーボードが激情を演出。その後は楽器隊のバカテクソロバトルです。ラストはサビメロが転調。哀愁がさらに増すんですが、さらに今度は元の調に戻り再びサビメロへ。裏ではラッセルのエモーショナルなシャウト風の歌い回しも聞こえて胸を熱くさせてくれます(笑)メロディーの彼ららしいフック、展開美の美しさ、テクニカルなプレイと彼らのいいところをわかりやすく凝縮したような会心のキラーチューンですね、これは。

#3.Fallenはキラキラとした冷ややかなキーボードと妖しげな雰囲気からへヴィなギターリフが顔を出すミディアムナンバー。さらにベースとギターによる超絶な速弾きユニゾンが冒頭から聞けます。サビメロはラッセルが声を張り上げるように歌い、間奏はダークでミステリアスなメロディーを歌うコーラスも登場。また、ギターソロが曲の尺に対してかなり長めです。全体的に淡々としていますが、そこが逆に妖しさを一層強めていますね。#5.Communion And The Oracleはクリーンで叙情的なギターとピアノ、ストリングス静かに始まる7分半ほどのプログレナンバー。この何処か神秘的で幻想的な美しさを持ったメロディーの絡みを一通り堪能した後にボーカルも登場。切々と歌いあげますが、ボーカルメロディーはもちろんこのピアノの儚い旋律が絶品な美しさです。そして、一瞬速弾きギターソロが切り込むも再び儚いメロディーを歌うボーカルが登場。エモ−ショナルに歌った後に今度はがっつりとギターソロを弾きだおします。そして、まるで映画音楽かといわんばかりのシンセ、ストリングスが徐々に雰囲気を盛り上げていき、美しいコーラスがロマンティックで劇的なメロディーを歌い上げます。彼らの無駄のない考えつくされた展開とアレンジの妙とプログレらしい幻想的な美しさ、メロディーセンスが光る一曲です。

#7.On The Breath Of Poseidonは航海を描いたかのような雄大でドラマティックなストリングスから始まるインストですが、すぐにスリリングな映画で言う戦闘の際に流れるような緊迫したメロディーになり楽器隊の音も登場。疾走を開始します。しかし、スリリングな空気もまた一変し、叙情的で壮大な世界観に戻って曲は終わります。#8.Egyptは出だしのアラビアンなシンセとギターが強烈なインパクトを残す7分ほどのプログレナンバー。その中でもミステリアスなキーボードと囁くような神秘的なコーラスと彼ららしさが満載で、サビメロは壮大で甘くドラマティックなメロディーを聞かせてくれます。間奏は気怠くもエキゾチックなまさに中東とも呼べる独特の空気を漂わせるシンセをバックにギターが凄まじい速弾きを披露。その後はラッセルが声を張り上げ、さらに低音を効かせと歌唱の幅の広さを見せ、再びサビメロへ。ラストは妖しげなピアノで終わります。曲は少し長めですが展開は意外とストレートで、今回のコンセプトらしい雰囲気もばっちり出ていますね。

#9.The Dead Of Balance/Lacrimosaは民族の儀式チックなシンセとストリングスから始まるインスト。その妖しげなピアノとセインセをバックにへヴィなリフと軽快に暴れ回るドラムソロが聞いていて気持ちいい前半。そして、後半はか細いギターと共にモーツアルトのレクイエム〜涙の日〜のフレーズをアレンジしたメロディーがシンセ、コーラスと共に荘厳に演奏されます。これは管理人も原曲はすごく好きなため、新鮮で楽しめましたね。#12.A Fool's Paradiseは彼ららしい神秘的な雰囲気を持った疾走チューン。ドラムソロからエキゾチックでミステリアスなキーボードと共に疾走。サビメロが彼らにしてはややフック不足なような気がしないでもありませんが、この曲は間奏に尽きますね。ギターソロ部分はバッハのチェンバロ協奏曲第1番の第1楽章のフレーズを引用しており、クラシカルで流麗な速弾きとキーボードには思わず感嘆の声をあげてしまいます。原曲のこの短調のメロディー自体が管理人的には元々好みですしね。

#13.Rediscovery Part 2-The New Methology-はアルバムのラストを飾る12分超の大作。へヴィなリフと儚く幻想的なキーボードが絡み合い、ピアノと変拍子をキメまくるギターも登場。ボーカルも淡々と歌いますが、反してメロディーは非常に壮大です。ややまくしたてる様にボーカルが歌った後は妖しいギターソロとなり、上品で仄暗いピアノとコーラスが登場。この奈落に落ちていくような部分凄くいいですね〜。そして、バラード調にピアノとシンセをバックにラッセルが哀愁メロディーをエモーショナルに歌い上げ、唸るベースと上品なピアノによるソロ、さらにへヴィなリフが再び切り込んだ後はチャージオルガン風のキーボードと手数の多いドラムをバックにボーカルが力強く歌い上げます。その後は疾走し、ギターとキーボードによるソロバトルが始まります。そして速弾きを披露するピアノと同時にエフェクトをかけたボーカルが入り、ラストは聖歌の如きポジティブな雰囲気を持ったコーラスが登場。前作と同じく映画でも見終わったかのようなあの謎の達成感が味わえます(笑)

今回のコンセプトに沿ったエキゾチックなフィーリングの楽曲も彼らにはかなりハマっていますし、相変わらずのメロディーセンスと展開美は見事です。しかし、これまでに比べると確かにストレートさ、わかりやすさは目に見えて減退しており、前作まではギリギリOKレベルだったのが、今作はギリギリアウトの域になっています。そういう意味では即効性も薄いため、プログレが聞ける方には何ら問題ないかとは思いますが、わかりやすい疾走チューンが好きな方やプログレを普段聞かない方にはちょっと勧めづらい物がありますね。完成度は間違いなく高いとは思うんですが・・・

管理人はプログレもあまり抵抗なく聞きますし、今作もすこぶる気に入ってはいるのですが、そういう意味では彼らに何を求めているかによって評価が別れるアルバムと言えそうです。

The Odyssey             (2002)                                            

                               

77点                                         

1.Inferno(Unleash the fire)

2.Wicked

3.Incatations of the Apprentice

4.Accolade U

5.King of Terrors

6.The Turning

7.Awakings

8.The Odyssey

9.Masquarade

10.Frontiers


アメリカ出身のネオクラシカルメタルバンドによる6thフルアルバム

前作であるVを引っさげたヨーロッパツアーは大成功に終わり、このツアーからフランスでのライブは後にライブCDとして発表。そして、その翌年に慌ただしくリリースとなったのが今作です。

今作はこれまでの作品とは趣向を変えてきており、得意のネオクラフレーズはかなり息を潜めへヴィリフを主体にしたモダンでへヴィな作風へと変化しています。バンドの出身国を考えると正直な所今作の方がよほどアメリカのバンドらしい訳なんですが(苦笑)、ニューメタルの影響を感じさせるへヴィだけどどこか無機質で気怠いリフやメロディーが管理人的にはどうも馴染めないというか彼らに期待している音ではないため、ちょっと全般的には眉を潜めがちな印象です。

#1.Inferno(Unleash the Fire)はピロピロとしたギターのネオクラフレーズが節々で聞けますが、基本的にはへヴィなリフを押し出したミディアムテンポの曲になっています。ラッセルの歌い回しもやけにワイルドでアメリカンな無骨さは感じますが、いまいちメロディーに彼ららしいフックが足りないので最初からちょっと期待外れかな・・・という感じです。#2.Wickedも引き続きへヴィなリフを主体に作られた曲ですが、キーボードの音使いやコーラスはいつもの彼ららしい妖しさを感じさせます。しかし、これもメロディーにフックが足りないというかリフばかりが強調されていてやや退屈さを感じさせるのが管理人的にはマイナスポイントですね。やはり、バカテクのソロのやメロディーのフックが彼らの大きな武器であったためにへヴィリフ主体であることの魅力がそれほど感じられないのです。

#3.Incantations of the Apprenticeは徐々に大きくなるへヴィリフとピロピロギターから走り出す曲で、これまでの2曲と比べると疾走感があるためさほどひどい印象はありませんね。むしろこれは素直にカッコいいと言えます。相変わらずメロディーのフックがやや不足気味であることを除けば、メタル本来のダイナミズムが味わえていいのではないでしょうか。#4.Accolade Uは3作目のThe Accoladeの続編となる彼ららしいプログレチューン。これまで今作のレビューで散々メロディーのことを言ってきた管理人ですが、この曲に関してはそれらが嘘のように美しく叙情的なメロディーを聞かせてくれます。彼らのプログレチューンらしい幻想的な儚さに静と動の使い分け、それに転調とツボを押さえたドラマティックな曲展開は見事の一言。全般的に不作気味な今作では一番のお気に入りです。

#6.The Turningはドラムソロからザクザクしたギターリフで疾走するファストチューン。メロディーは今作らしい倦怠感が漂っていますが、これもギターのザクザク感が普通にカッコいいと言えばカッコいいですね。ソロもキーボードとギターのピロピロユニゾンバトルと今作では一番ストレートな曲になっています。#8.The Odysseyは今作のメインディッシュとなる約24分の長さを誇る超大作です(苦笑)へヴィリフに勇壮なシンセが絡み、やけにリリカルで物語の始まりを予感させる希望にあふれた出だし。この時点で映画音楽的なスケール感がある訳ですが、歌うようなギターメロディーがこのパートは特に耳を惹きます。そこからアコギが登場し、ようやくボーカルが登場。彼らしい幻想的な美しさを感じさせるメロディーとアコギがマッチして儚い空気を演出。途中からは楽器隊の音とコーラスも入り、劇的な雰囲気を醸し出します。次はピロピロギターと怪しげなキーボードによるユニゾンバトルやソロプレイメインのパートへ突入し、へヴィリフを強調した緊迫感ある空気に早変わり。引き続きへヴィリフを押し出して疾走し、ラッセルもワイルドな歌い回しを披露。そこからピアノとベースメインでバラード風の穏やかな空気を一瞬挟んで、コーラスとへヴィリフ、さらにピロピロギターソロという流れとなります。ワイルドな歌い回しとダークでミステリアスなキーボードから決戦を感じさせるホーンやシンセの音が再び緊迫感を覗かせ、そこから戦闘が終わったかのような壮大で物悲しいメロディーのシンセとリフで疾走。さらにコーラスと共にボーカルが哀愁メロディーを歌い、ラストは静かなギターとボーカルで切々と物悲しいメロディーを歌い終了となります。曲自体はものすごく長いわけですが、パートのメリハリがしっかりしているので助長さは一切感じられず、一度聞き出すと管理人は最後まで聞いてしまいます。やはり彼らの長尺曲は展開がしっかりしていていいですね。

#9.Masquaredeはボーナストラックとなっており、待ってましたの1stアルバムに収録されていたキラーチューンの再録です。最初の出だしがシンセをより荘厳に盛ってあることにより長さが増していますが、そこがより劇的さを演出していていいですね〜。そしてボーカルにやや難を抱えていた1stに比べるとラッセルのボーカルはやはり安定感が抜群です。音質も当然比べ物にならないほど改善されていますし、ファンにはこの上なく嬉しい再録でしょう。

今作の特徴であるニューメタル的なへヴィリフがいいように曲に作用している面もあるにはありますがいかんせん肝心なメロディーのフック+ネオクラ要素が大幅に減退しているため、管理人としては彼らの作品では一番苦手なアルバムです。逆にプログレ系の曲に関しては相変わらず安定した出来のためそこは一安心といったところでしょうか。

プラスに考えればへヴィメタル本来のアグレッシブさやダイナミズムが今まで以上に感じられる作風ともとらえられますし、その無骨さにも魅力を感じる方々からは今作も良作と評されていますが、管理人のような基本的にはメロディー重視派タイプの方にはちょっと合わないかな〜という作品だと思います。

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