緑の森で眠ル鳥                       (2001)                                                                             

                                 

85点                                         

1.迷夢

2.宵森人

3.NOTTE

4.サクリファイス 


日本の女性アーティストによる1stミニアルバム。

昨今の音楽シーンで独自の賑わいや盛り上がりを見せているのが、俗にいう同人音楽というシーンです。インターネット及びパソコンの普及から、誰もが気軽に音楽を聞き、または作れる時代になっている現代ですが、同人音楽とはそういった中で特にミュージシャン等を目指すわけでもない一般の人が趣味の範疇という形で自分の曲や音楽を作成。自作の音源などを同人音楽を扱う会場やホール、ネットにて販売、または無料で提供するという極めてDIYなシーンです。楽曲も自作の物とは限らず、既存曲を自分流にアレンジしたものを作品として出すといった自由な風潮があります。

とりわけ日本のアニメや漫画といった文化とは密接な関わりがあり、その中でもシューティングゲームである東方ProjectのBGMアレンジはこのシーンでも大きなウェイトを占めているようです(管理人もこれに関してはそこまで深くは知らないのですが・・・)それじゃあ、いわゆるインディーズと一緒じゃない?、という事になりますが、あくまでも個人の創作意欲を満たし、好き物の間だけで楽しめれば利益は二の次といった面が先行しているのが大きな違いと言えそうですね。要は元より全くメジャーシーンを意識していないため、見方を変えれば流行にとらわれない独自の音楽が生まれやすい温床とも言えるのです。

そんな同人音楽シーンから登場し、何とバイオリニストの葉加瀬太郎に見出されavexからメジャーデビューを果たしたのが今回ご紹介する志方あきこです。彼女の音楽性は基本的には西洋の民謡、ヒーリングミュージックを下地にゲームのようなファンタジックな世界観を描き出すというものになっていますが、何より驚かされるのが志方本人の多彩な歌唱と重厚なコーラスワークでしょう。ややアニメの声優っぽさのある平たく癖の強い透き通ったクリーンボイス、本格的なソプラノボイスに低音を効かせたアルトボイスと様々な声を使い分け、何も知らないとまるで別人がそれぞれ歌っているかのような印象を受けてしまうほどです。そして、癒し系ミュージシャンとして有名なEnyaのように自分の声を何重にも重ねたコーラスも圧巻で、まさに「日本版Enya」と言ってしまってもいいぐらいだと思っています。

さらには歌詞も日本語はもちろんイタリア語、ラテン語、果ては彼女独自の解読不能な言語も飛び出したりともはや意味の分からないカオスな状態になっています(苦笑)

さて、今回レビューするのは彼女が自主制作でリリースした最初のミニアルバムです。まず驚かされるのがバックの楽器類はほとんど打ち込みとのことですが、チープさがほとんど感じられません。作風自体も志方あきこ独自の音楽性が既に完成しており、自主制作でこれほどの音源を作る事が出来るのがそもそも凄いとしか言いようがありませんね(苦笑)

#1.迷夢は何語かわからぬ(苦笑)言語をぼやけた低音ボイスで歌うボーカルから、壮大な多重コーラスと幻想的なシンセで一気に楽曲へ引き込むキラーチューン。この頃の志方のクリーンボイスはまだ妙なか細さがあるためか、今後の作品に比べるとさらに独特の声に聞こえますね。まるで森をさまようかのような幻想的な雰囲気を演出するシンセとコーラス、民謡チックなメロディーからサビは哀愁あるキャッチーなメロディーを聞かせてくれ、ラストは低音を効かせたオペラチックな歌唱も披露しています。

#2.宵森人も幻想的で澱んだダークなシンセに小鳥の囀り、神秘的なコーラスから始まるミディアムチューン。こちらもまるで不思議な森の中にいるような、独特の雰囲気を放っています。歌詞は全編イタリア語で、パッと聞けばおよそ邦楽とはとても思えない本格的な外国のヒーリングミュージックそのものと言えます。ラストは徐々に大きくなる不協和音で終わるのが、幻想的な美しさと紙一重の狂気を感じさせますね。#3.NOTTEはアコギと力強く壮大な音色のシンセ、笛の音で民謡チックな雰囲気を醸し出すアップテンポチューン。前2曲の神秘的な色合いとは違い、民族音楽ならではのパッションが感じられますね。サビもなく、メロディーの繰り返しもないと定石通りのつくりではないので掴み所のない曲になっていますが、どちらかというと雰囲気に浸る曲でしょうね。

#4.サクリファイスは志方の細い独特の囁くような声からコーラスを分厚くして展開していく曲で、志方の多重コーラスを存分に堪能できる曲ですね。シンセは味付け程度にしか入ってこず、低い声から高い声までどれだけのコーラスを重ねたんだというぐらいの多重コーラスをまるで楽器のように扱っています。また曲の尺も2分半と短めですが、短さを感じさせない劇的さを感じますね。

本当に自主制作かと疑ってしまうほどのアレンジと多彩なコーラス、さらに楽曲の放つ独自の雰囲気は彼女が最初から異彩を放っていたことを伺わせるものになっていますね。こういうヒーリングミュージック系の音楽はどちらかというと雰囲気重視のところが無きにしも非ずなんですが、何気にメロディーラインも耳に残りやすい物が多いのというのも大きなポイントです。

管理人のサイトでも紹介しているKalafinaが好きな方やヒーリングミュージック、民謡チックな音楽をお探しの方、個性的な邦楽女性アーティストを聞きたい方には是非聞いていただきたいアーティストですね。

 

 

廃墟と楽園                    (2003)                                                                             

                                     

90点                                         

1.Come raggio di sol

2.ロマの娘

3.MARE(Andante molto espressivo)

4.Se l'aura spria

5.ラヂヲ予報

6.廃墟と楽園

7.何処へ

8.Contrasto

9.イゥリプカ

10.古

11.MARE(Allegretto grazioso)


日本の女性アーティストによる1stフルアルバム。

デビュー作で自主制作ならではのチープさを全く感じさせないクオリティーで注目を集めた志方あきこの初のフルアルバムがこの廃墟と楽園です。前作に引き続き今作も自主制作でのリリースとなっていますが、楽曲や音質共にクオリティーはさらにレベルアップしていますね。特にとても打ち込みっぽさを感じなかった楽器の音も今作は生の弦楽器の音を導入しているようですし、シンセの音やコーラスの絡みもより一層ビルドアップされた印象です。

作風は前作の延長線上ではありますが、フルアルバムということで前作以上に濃密に彼女の織りなす独特の浮世離れしたオリエンタルで幻想的、ファンタジックな世界観に浸れる作品になっています。

#1.Come raggio di solは志方の多様なコーラスとアコギがまるで西洋のおとぎ話のような幻想的な雰囲気を演出するインスト。オープニングインストという位置づけでしょうが、ほのかな哀愁を感じさせるメロディーとコーラスでの盛り上がりが半端ではなく、志方もオペラチックな歌唱を披露しています。#2.ロマの娘は外国の市場でのどよめきの音が異国情緒を漂わせつつ、雄大で力強いメロディーを奏でる弦楽器とコーラスが民族色独特のオリエンタルさを放つキラーチューン。この力強くも情熱的なメロディーが、ラテン系の土着的な哀愁を感じさせますね。絶妙なタイミングで歌とかけあうように入ってくる弦楽器やアコギ、コーラス、さらには弦楽器によるソロもありとのっけから強烈な曲です。彼女がどうして葉加瀬太郎から見出されることになったかは、こういう曲を聞くと頷けるものがありますね。

#3.MARE(Andante molto espressivo)は全編イタリア語の幻想的なミディアムテンポチューン。透き通るかのようなコーラスからどことなくクラシックをルーツに感じさせる上品なメロディーを淡々とコーラスと共に歌いますが、この出だしの陰りのあるメロディーが筆舌しがたいほど美しく幻想的でいいですね〜。しかし、途中では一転して爽やかで広がりのある違った美しさを持ったメロディーが顔を覗かせたりと結構プログレッシブな曲になっています。多重コーラスからアコーディオンによるソロもあったりとかなりこれも独特の個性を放つ曲になっています。#5.ラヂヲ予報はアコ−ディオンの音と穏やかなシンセから始まるPOPチューン。これまで割と凝った曲が多かったんですが、この曲は展開もごく普通のJ-POPらしいわかりやすい展開です。サビも伸びやかなキャッチーさがありますが、アコーディオンを目立たせたアレンジややラジオから聞こえるようなぼかした声が聞こえたりと独特の個性的な面もちゃんと備わっています。しかし、こういう普遍的な曲になると志方の独特の声がより目立つため気になる人は気になるかもしれません。

#6.廃墟と楽園は今作のタイトルチューンである幻想的なミディアムチューン。無機質でたたきつけるようなシンセと囁くようなコーラスから、独特の哀愁を感じさせつつも掴みどころのない不思議なメロディー、サビでは透き通るようなコーラスと共にフックある哀愁メロディーを聞かせてくれます。間奏は多重コーラスによる凝りに凝ったコーラスワークが思う存分堪能できます。掴みどころのない雰囲気と無機質なシンセ、ラストの不協和音チックなコーラスははある種ちょっとした恐怖を感じさせる部分もあります。#8.Contrastoは叙情的で物悲しくも美しいピアノと弦楽器による絡みからボーカルが入るしっとりしたミディアムチューン。今までの変則的かつ幻想的な雰囲気とは違い、より重厚で劇的な哀愁を感じさせますね。ピアノが劇的さを演出し、サビではコーラスと共に物悲しい哀愁メロディーが聞けます。間奏は弦楽器とピアノによる壮大で重厚なソロも聞けたりとこれも管理人の好みの雰囲気です。

#9.イゥプリカは笛の音から呪術的な謎のボーカル、金属音などが何かの儀式を思わせますが、途中からは西洋の民謡チックなリズムや独特の哀愁が感じられるメロディーとなります。間奏は低音を効かせたこれまた儀式チックで怪しげなコーラスも聞けたりと、今作でも特に日本人離れした曲ではないでしょうか(笑)#10.古は小鳥の囀る音が森の中にいるような雰囲気を演出し、朗々と民謡チックに力強いメロディーを歌うボーカルが登場。お得意の多重コーラスも飛び出し、サビはその流れを引き継いだ壮大でフックある土着的なメロディーを聞かせてくれます。何気に今作の中でも特に志方のボーカルが癖もなくしっかり歌われているような気がしますね。

#11.MARE(Allegretto grazioso)は3曲目のアレンジ違いとなっているボーナストラック扱いの曲。重厚なコーラスがメインだった原曲とは違い、シンセや金属音、ドラムの音も入り、より軽やかな印象を感じさせるアレンジになっています。こっちのアレンジも面白みがありますが、管理人的にはやはり原曲の方が好きですね。

志方あきこの本領発揮と言わんばかりの濃密でかなり独特の世界観を持ったアルバムになっていますね。民族色濃い楽曲を中心に、いろんなアプローチの楽曲があって管理人的には癖が強いながらもハマれば飽きを感じさせないアルバムだと思います。幻想的である種掴みどころのない所もありますが、メロディーは相変わらずフックがあるためメロディー派の人にもオススメな他、複雑な曲や個性的な曲、プログレ好きな方も一聴の価値はあるのではないでしょうか。

管理人的には何よりも引き続き、これがプロとして作ったというよりあくまで自主制作ということに驚きを隠せません(苦笑)

 

 

Navigatoria                      (2005)                                            

                                             

84点                                         

1.Siren

2.Navigatoria

3.睡恋

4.西風の贈り物

5.花帰葬

6.HOLLOW

7.カルナヴァル

8.Sorriso

9.空の茜 空の蒼

10.La Corolle

11.Makada〜Queen of Sheba〜

 

 
日本の女性アーティストによる2ndフルアルバム。 

灰汁が強いながらも芸術性の高い独特の音楽性と凝りに凝りまくったコーラスワークで同人音楽でも独自の地位を築き始めた志方あきこですが、その音楽活動はバイオリニストである葉加瀬太郎も注目したようで、自身がプロデュースするavex系のレーベル「HATS」よりメジャーデビューを打診。志方自身もそれを了承し、2005年に遂によりメジャーデビューと相成りました。管理人は葉加瀬太郎の音楽も結構好きでちょくちょく聞いているんですが、葉加瀬太郎が何故志方あきこに注目したのかは前回の「廃墟と楽園」でも少し触れましたが彼の楽曲を聞くと志方の音楽性と幾つかの共通点(異国情緒や繊細さを感じさせつつもスケールの大きい音楽性等)を感じるため、とても頷ける部分がありますね。

さて、メジャーデビューと同年にリリースされた今作はメジャーシーンを意識したためなのか、これまでの作品で見せている狂気じみた変則的でディープな世界観はやや薄れており、良くも悪くも角が取れた印象を受けますね。これを肯定的に受け止めるかどうかは意見の別れるところでしょうが果たして・・・

波の音と神秘的なコーラスが神々しい雰囲気を放つインストの#1.Sirenからアコギとヴァイオリン、シタールの音が夕暮れの南国の風情を感じさせるミディアムチューンの#2.Navigoatoriaへ。サビのメロディーは静けさを保ちながらもノスタルジーな哀愁を感じさせますね。今までの彼女にはなかった新しい異国情緒を垣間見せている一曲ですね。ベースも程よく主張しており、間奏ではヴァイオリンと共に短いながらソロを披露しています。#3.睡蓮は深く澱んだピアノの音と幻想的なコーラス、シンセの音が耳を惹くミディアムチューン。深い神秘的な森を感じさせるこういうタイプの曲は彼女の得意な曲ですね。さらにサビメロはキャッチーながら日本的なしっとりした哀愁が感じられてすごくいい感じですね〜。管理人的にこういう曲はやっぱり弱いですし、ラストは転調というのも大きなポイントです(笑)

#4.西風の贈り物は全編イタリア語で書かれた明るくも穏やかなミディアムチューン。ギターとヴァイオリン、コーラスを中心に紡ぎだす神秘的ながらも適度なPOPさを持った明るいメロディー、港町で繰り広げられる日常を描いた歌詞から西洋の長閑な港町をイメージさせますね。これもメロディーがとてもいいですし、楽曲の世界観もしっかりしていて管理人的に今作でも非常に好きな楽曲です。#5.花帰葬は同人ゲーム「花帰葬」のタイアップ曲となっている哀愁全開のキラーチューン。謎の言葉を発するコーラスのイントロからラテン系の情熱を感じさせるヴァイオリン、サビの凄まじいまでに耳に残る哀愁メロディーとまさに志方あきこらしい安心のキラーチューンと言えるでしょう。ラストはまるで掛け合うような彼女の様々なコーラスが登場するのも面白いですね。

#6.HOLLOWは志方の声にノイズをかけ、インダストリアル系の不気味さを醸し出すダークなミディアムチューン。これまでわりとわかりやすい曲が揃っていましたが、ここに来て変態さを持った曲を持ってきましたか(笑)志方のクリーンボイスは甲高くややふにゃりとした印象があるんですが、それにノイズをかけることで何とも言いようのない薄気味悪さや狂気が出ていますね。ギターの重い音も強調されており、呟くような声やノイズの声と対比するように神秘的でダークなコーラスも顔を出したりと今作ではダントツでマニアックな曲になっています(笑)#8.Sorrisoは叙情的で穏やかなピアノを中心に志方のオペラチックな歌唱が堪能できるシンプルな全編イタリア語のミディアムチューン。コーラスもいつもと比べると派手さはなくやや控えめで、シンセの音とピアノでしっとり聞かせるヒーリングミュージック色濃い曲になっていますね。

#9.空の色 空の茜はアコーディオン、ピアノの音が中心の普遍的でミディアムテンポのPOPチューン。これは歌詞も含めてごく普通のしっとり系J-POPという感じですが、インディーズの頃と比べると志方のクリーンボイスが癖も減り安定度が増しているのが大きいですね。こういうタイプの曲でもあまり違和感なく聞けるようになっているのは成長を感じさせます。#11.Makada〜Queen of Sheba〜は神秘的で儀式的な雰囲気を放つコーラスから始まるプログレッシブチューン。最初は重厚な雰囲気と何語かわからない厚いコーラスで淡々と展開していきますが、突如打ち込みとクリーンなギターをバックに日本語で歌いだし、再び神秘的なコーラスと喚くようなぐにゃりと曲がったクリーンボイスの後に哀愁メロディーを歌いあげ終了と志方らしい変則さが感じられます。

インディーズの頃の個性を残している曲もあるとはいえ全体的には聞きやすい曲が増えており、楽曲そのものは洗練されてきているものの肝心な方向性が少し中途半端という印象を受けますね。元々音楽性の灰汁が強かっただけに余計にそう感じるのかもしれませんが楽曲の質自体は特に落ちている訳でもないからこそ、どっちつかずさがぬぐいきれない部分を感じてしまいます。

楽曲自体は相変わらず魅力的な楽曲が多いため管理人的には問題なく及第点ではありますが、メジャーデビューしてからの方向性をどうしていくかの明確なビジョンがまだ定まっていない感を何となく感じてしまうのがやや不安と言える作品ですね。

 
RAKA

RAKA                 (2006)                                            

                                                             

98点                                         

1.大地の鼓動

2.金環蝕

3.春告げ〜Raggi di primavera〜

4.まほろば

5.蒼碧の森

6.黎明〜Aurora〜

7.祈り〜モンラム〜

8.Luna piena

9.うたかたの花

10.晴れすぎた空の下で

11.AVE MARIA

12.謳う丘〜EXEC_HARVESTASYA/.〜

 

 


日本の女性アーティストによる3rdフルアルバム。

満を持してのメジャーデビュー作となった前作はどことなくメジャーシーンを意識し過ぎて不完全燃焼とも言える部分が残る作品となってしまった志方あきこ。といってもメジャーデビュー以降も同人音楽シーンでやっていたことと特に変わりなく同様にゲームへの楽曲提供や編曲を主に担当し続けている訳ですが、翌年にリリースされた今作にてついに彼女はやってくれました。まるで迷いを振り切ったかのようにコーラスを重ねまくった幻想的で神秘的、重厚な世界観。メジャーアーティストならではの洗練具合が極限まで研ぎ澄まされ、融合した結果、凄まじいアルバムを生み出すことに成功したのです。

インディーズ時代のマニアックさやアングラさはすっかり薄れたものの、そこにあるのはそれを帳消しにしてさらなる魅力を付加させるほどのめ息が出るほどに美しく壮大でファンタジックな極上のヒーリングサウンドです。また、志方自身の歌唱もかなり洗練されてきたようで、コーラス主体ではない歌モノも非常にとっつきやすい声や歌い方になっていてそこも大きなプラスになっていますね。

#1.大地の鼓動は異民族チックながら壮大な雰囲気を感じさせるインストで、そこから力強い生命力や躍動感を感じさせるミディアムチューンの#2.金環蝕へ。民族色濃い雰囲気は何となくアフリカの大自然を想像させるものがあります。途中では何とスワヒリ語まで登場するあたり世界観に徹底していますね。#3.春告げ〜Raggi di primavera〜は志方のコーラスが存分に堪能できるヒーリングナンバー。笛の音や暖かいメロディーはタイトル通り春の訪れを告げるようで、オーケストラとコーラスで終始美しくも暖かいメロディーを歌い続けます。間の転調は何となくクラシック音楽(古典派〜ロマン派)に通ずるものを感じますね。歌詞は全編イタリア語のようです。

#4.まほろばはしっとりとした和風の侘しい哀愁が感じられる歌モノ。志方のクリーンボイスを主体にしたJ-POP的展開となっていますが、サビの和風情緒漂う純和風な哀愁がいい味をだしていますね〜。笛の音やピアノの音を主体に琴の音を導入しているのも和を感じさせるアレンジとして楽曲に違和感なくマッチしています。#5.蒼碧の森は志方お得意の深い森を感じさせる幻想的でファンタジックな曲。シンセやコーラス、笛の音が特有の雰囲気を演出していますし、サビメロもまたいい哀愁を持っていて管理人的にツボです。やはり楽曲の雰囲気に浸れるアレンジは得意路線だけに流石の一言です。

#6.黎明〜Aurora〜は再び志方のコーラスを存分に生かしたヒーリングナンバー。大自然の壮大さを感じさせる穏やかなメロディーが主体ですが、ふと暗く物悲しいメロディーも顔を覗かせ、またすぐに穏やかなメロディーに戻るというのが自然の厳しさも含めた営みそのものを表しているように管理人は思いました。こちらも歌詞は全編イタリア語のようですね。#9.うたかたの花は全曲のまほろばと系列的には一緒の哀愁ナンバー。しかし、哀愁の破壊力で言えば管理人的にはこちらが上のように思います。サビメロの物悲しい哀愁が管理人的にもろにツボなのはもちろんラストはサビメロの転調という展開もおいしい限りです(笑)こちらは二胡の音が所々で聞こえるせいかやや中華風と言えるかもしれません。

#10.晴れすぎた空の下では笛の音と民族色濃いコーラスがオリエンタルさを感じさせる曲で、管理人的には何となくアンデス山脈あたりの文化や風景がイメージとして浮かんできます。展開自体はサビメロもはっきりとしたJ-POP的展開ですが、民族色がどっぷり味付けされている部分が独自の個性を感じさせます。サビメロはやけにクサい(笑)メロディーですし、間でのまるで男性かと思わせる志方の低音をかなり聞かせたコーラスも耳を惹きます。#11.AVE MARIAはシューベルト作曲の原曲に彼女の才能を見出した葉加瀬太郎のヴァイオリンをフューチャーしたカバー曲。展開は原曲に忠実ですが、流石にそこは志方のカバーだけあってシンセと多彩かつ重厚なコーラスに彩られたアレンジは楽曲の元々の神秘性をさらに高めています。葉加瀬のヴァイオリンも志方のコーラスとハモることを優先的に考えられたアレンジのようで、いい具合に楽曲にハマっています。

#12.謳う丘〜EXEC_HARVESTAYA./〜は今作の集大成となる壮大な世界観を持った曲で、志方の低音主体のコーラスから始まり、そこから一気にオーケストラと重厚なコーラスで楽曲に引き込む展開がまるで壮大なテーマの映画音楽やRPGのゲームを思わせてまず鳥肌物ですし、サビメロもキャッチーで一発で耳に残りますね。間奏ではコーラスが不協和音的な交わりを見せる変則性が顔をだし、そこからラストに向けて徐々に盛り上がりを見せます。ラストのサビメロは重厚なコーラスをバックにサビメロを歌い、シンセとヴァイオリンで志方が切々とクリーンボイスで歌って終了という凄まじく劇的な展開になっています。管理人も最初に聞いたときはそのあまりのスケール感にただただ圧倒されるばかりでした。

普遍性やJ-POP要素の強かった前作とは大きく方向性を変えてきたアルバムになっていますね。メジャーデビュー前にあった前衛的な変態さはあまり感じなくなったものの、どちらかというと今作の方が彼女らしいといえばらしい作風でしょう。美しい響きのツボを心得た重厚なコーラスとファンタジックでスケールの大きな世界観は圧巻の一言で、これほどの作品は中々ないだろうと言えるほどの何かを感じさせます。

ある種Enyaを端に発するヒーリングミュージックとしても国内の作品としては極致と呼べるほどの名盤でしょうし、管理人の墓の中まで持っていきたい名盤です。

 
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