LILAC             (1998)                                            

                                                                    

85点                                         

1.シナゴーク前奏曲イ短調〜第一楽章〜

2.Imitation white

3.Sacrifice

4.eternal wish〜届かぬ君へ〜

5.人間不信

6.窓際の夢(Live ver)

 

 
ヴィジュアル系バンドであるRaphaelの1stミニアルバム。

ヴィジュアル系ブームも後半となった1999年。若干18歳にてメジャーデビューを果たした4人組のバンドがこのRaphaelです。バンドのコンセプトに「等身大の自分たち」、「癒しの旋律」を掲げ、1997年の結成からわずか2年でメジャーへの切符を掴んだヴィジュアル系シーンでも早熟のバンドでした。メジャーデビュー以降も盛んな活動を続けるも、バンドの楽曲作りの中心人物であったギタリスト華月の急死により2000年に永久活動停止を宣言。表舞台から姿を消してしまいました。まさにクラシックでいうモーツァルトやメンデルスゾーンのような夭折の天才というべきバンドでしたね。

活動停止後は、ボーカルのYUKIはドラムのHIROと共にriceというユニットを結成。さらに、HIROは大塚愛やBoA等のサポートドラマーも務めています。ベースのYUKITOは音楽活動を休止し、バーの経営をしているようです。しかし、10年以上過ぎた今年度の2012年に10月31日、11月1日に東京にてまさかの復活ライブを行うことを宣言。再結成、復活ブームの現在の音楽シーンをさらに賑わせています。

そんな彼らの音楽性はというとキーボードをふんだんに取り入れたメロパワ、メロスピなどのクサメタル寄りの音楽性と言えるでしょう。ボーカルのYUKIは元々合唱団で歌っていたという経歴のためか中低音を効かせ朗々と歌うタイプで、安定した歌唱を見せています。そして何よりの長所がメインコンポ―サーであった華月の抜群のメロディーセンス、当時の思春期の年代から多くの支持を集めていた思春期ならではの悩みや疑問を歌った歌詞にあると管理人は思います。管理人は学生時代にこのバンドに出会った後追いファンなのですが、その楽曲が大好きなのはもちろん彼らと同じぐらいの年だったこともあってか歌詞にとても共感を覚え、勇気づけられました。

さて、今回レビューするこのLILACは彼らがインディーズ時代にリリースした初のミニアルバムになります。演奏等はややドタバタとしたB級感やつたなさがあるものの楽曲からは若さや初期衝動がひしひしと感じられますし、今後の可能性を期待したくなるような凄まじく光る何かがありますね。

#1.シナゴーク前奏曲イ短調〜第一楽章〜は打ち込みやシンセをメインにしたインスト。緊迫感を持ったスリリングな雰囲気にクサメタルライクなキーボードが期待感を煽ります。管理人的には何となくMALICE MIZERを髣髴とさせますね。#2.Imitation whiteはギターとややバタついたドラムから疾走するメロパワナンバー。哀愁を持った耽美でクサいメロディーとキーボードがとても心地よいですが、この曲の肝はやはり間奏でしょうね。ベースソロからクラシカルで叙情的なピアノが入り、ドラムの金物の音からとても神秘的で綺麗なメロディーを奏でるキーボードが入りますが、ここの部分は本当に圧巻です。特にクサメタラーの方はまずノックアウトでしょう(苦笑)

#3.Sacrificeは前曲の流れをそのままにクリーンなギターとうねるベースから始まるメロパワナンバー。これもメロディーが綺麗で独特の哀愁があっていいですね。走る中でさり気に聞こえるクラシカルなピアノとこのクリーンなギターもとてもセンスを感じさせます。#4.eternal wish〜届かぬ君へ〜はホーリーで煌びやかなシンセから始まる白系のバラード。Raphaelというバンド名にぴったりと言える聖なる穏やかさが漂ったしんみりと浸れる曲になっていますね。季節的には冬のクリスマスがぴったりだと思いますし、管理人的にはギターソロのエモーショナルで綺麗なメロディーが特にツボです。

#5.人間不信は怪しげなベースとクリーンなギター、途中でドラムも加わり淡々とした雰囲気がただよいますが、シャウトを合図に猛烈に疾走するヴィジュアル系らしい暴れ曲。語りのように歌うボーカルと叩きつけるようなギターで荒く疾走し、ドラムソロから彼らのセンスを活かしたキャッチーでフックあるメロディーを歌い上げています。バンドの初期衝動が惜しみなく詰め込まれたような若さあふれる一曲ですね。#6.窓際の夢(Live ver)はラテン系のアコギとボーカルのみで作られたアップテンポな哀愁ナンバー。Live verということでライブならではの一発で録られたような暖かみのある音になっています。アコギのせいか、どこか侘しい哀愁が感じられます。

彼らのメロディーセンスなどはこの頃からずば抜けていたことを感じさせてくれるミニアルバムですね。確かに演奏のバタつきや粗さなどアラ探しをしようと思えば結構出てくるかもしれませんが、当時の彼らはまだ高校生だったと考えればむしろ十分すぎる位ではないかと管理人は思います。特に今作というかこのバンドはメロパワ、メロスピファンの皆様は聞いてみると、思わぬ掘り出し物が見つかったと思われる方も結構いらっしゃるかもしれません。

 

 

「sick」                                  〜xxx患者のカルテ〜                       (1999)                                                                             

                                                

86点                                         

1.シナゴーグ前奏曲〜第二楽章〜ホ短調

2.症状1.潔癖症

3.症状2.分裂症

4.症状3.XXX症

49.49(Secret track)

 


ヴィジュアル系バンドであるRaphaelの2ndミニアルバム。 

前作にてその抜群のメロディーセンスと荒削りながらもメロパワファンをも引き付ける楽曲で、当時のインディーズでのヴィジュアル系シーンでも注目され始めたRaphaelが届けた今回のミニアルバムはいわゆるコンセプトアルバムというべき内容になっています。まぁ、それは置いといてこれはまずジャケットが強烈なインパクトを残しますね(笑)どうもこれはかのX JAPANのミニアルバムであるVanishing Visionのジャケットをモチーフに作られたようで確かにジャケットの人物の胸には血みどろのXの文字が・・・ちなみにこのジャケットの人物はベースのYUKITOです、何でこんなことになったのやら(苦笑)

で、今回のアルバムのコンセプトはというと曲名とアルバムのタイトルを見て頂ければお分かりのとおり、違う病気を持った3人の病人のカルテを曲になぞらえたものとなっています。そしてさらに、49トラック目にはシークレットトラックも収録されていまして、これはCDにも載っていないため意外と見落としがちです(笑)

#1.シナゴーグ前奏曲〜第2楽章〜ホ短調は前作からのシリーズとなっているお決まりのインスト。しかし、こちらは今作のカラーに合わせてかやや妖しいシリアスさを持ったメロディーになっていますね。チェンバロ系のシンセやキーボード、打ち込みとクサメタルライクな部分は相変わらずではありますが・・・#2.症状1.潔癖症は轟音をかき鳴らすようギターから始まるストレートなヴィジュアル系らしいメロディアスチューン。サビメロのやや古臭さを感じるメロディアスさがこの当時のバンドらしい懐かしさに似た感情を呼び起こします。歌詞としては汚れることを嫌い過ぎるあまり、全てをシャットダウンし孤独を求める精神的に潔癖症の人間を描いています。

#3.症状2.分裂症は電話のコール音と足音、フワフワとしたシンセがホラーな妖しさを演出しますが、その実はピアノを中心に切々と歌うバラードナンバーです。サビメロの哀愁を携えた優しげなメロディーと弦楽器、シンセによる透明感の演出がとても秀逸です。メリハリのあるピアノが強調されているせいか、どことなくX JAPANに通じるクラシカルで劇的なドラマティックさがありますね。間奏やラストのエモーショナルなギターソロも曲に見事なエモーションを与えています。歌詞は純粋過ぎるがあまり、壊れてしまい笑い続ける自分をもう一人の自分が苦しみながら止めようと葛藤している様子が描かれています。

#4.症状3.xxx症は今作でも屈指のキラーチューンと言えるメロパワナンバー。キラキラと妖しいシンセからギターをかき鳴らして早速走り出し、サビではエモーショナルでフックあるメロディーをドコドコと疾走して聞かせてくれます。間奏のダークで美しいシンセパートも本当に綺麗なメロディーですし、そこからのベースソロ。そして、かき鳴らすようなギターソロ、再びシンセと共に切々と歌うといった構成のつなぎも見事です。ラストの疾走も直前にタメがあって、より疾走感を感じることができます。そして、この曲の歌詞はxxxの部分は本来はダウンの3文字が入りまして、ダウン症を題材にしています。知的障害の部類に入る病気ですが、この病気に対する偏見や世間の誤った侮蔑の目を歌い、生まれたままの自分たちで認め合い生きて行こうとメッセージを歌い上げる社会派でシリアスな問題を扱った楽曲になっています。こういう楽曲を高校生で作るというのは管理人的には本当に感心しますし、尊敬の念を抱かずにはいられません。

そして、#49.49[Secret track]はへヴィなギターリフと共に荒々しく疾走するメタルナンバー。どことなく初期のAIONやX JAPANを髣髴とさせますね。加工されたボーカルや発狂シャウトとシークレットトラックらしい今までのシリアスな流れを完璧にぶち壊す一曲になっています(笑)

ミニアルバムといえどインストを除けば実質4曲とちょっと少ないような気もしますが、やはり楽曲は前作と変わらず、下手すればそれ以上の光を放っていますね。相変わらず若いな〜と思う荒々しさはありますが、メロディーのフックや楽曲作りやアレンジの巧妙さ、若さゆえに描ける純粋な視点を持った歌詞は彼らの大きな武器となっていることがよくわかる作品に仕上がっています。

 

 

mind soap                      (1999)                                            

                                                                   

93点                                         

1.シナゴーグ前奏曲 第三楽章〜変ホ長調〜

2.さくら

3.小夜曲〜悲愴〜

4.花咲く命ある限り

5.ピーターパン症候群

6.promise

7.ハックルベリーの恋

8.eternal wish〜届かぬ君へ〜

9.Holy mission

10.吟遊詩の涙

11.僕と「僕」


ヴィジュアル系バンドであるRaphaelの1stフルアルバム。

まだ若く粗削りながらもながらもその卓越したメロディーセンス、アレンジや歌詞で当時のヴィジュアル系シーンでも徐々に人気を上昇させていったRaphael。結成からわずか数年、さらにはわずか18歳でメジャーデビューの切符を掴み、1999年にシングル「花咲く命ある限り」満を持してメジャーデビュー。この年には同時期から活動していたJanne da arcやDir en grey、BAISER、LAREINEといったヴィジュアル系バンドも次々とメジャーデビューを果たしており、Raphaelも含め彼らはヴィジュアル系ブームでも最後の世代と言っても過言ではないでしょう。

そして、メジャーデビューと同年にリリースされた今作は実はRapahelが残した最初で最後のオリジナルフルアルバムとなります。荒さのある演奏は相変わらずながら持ち味であるメロディーセンスやキーボードによる上品なアレンジが遺憾なく発揮されており、メジャーデビューしたてのバンドならではの勢いや初期衝動と相まって、かなりの完成度を見せつけています。インディーズの頃と比べるといい意味で若干垢抜けた部分もありますね。

#1.シナゴーク前奏曲 第3楽章〜変ホ長調〜は彼らの作品ではお約束のインスト。今回は泡の弾けるような音とオルゴールっぽいシンセ、ハープ、さらにはパイプオルガンまで飛び出し、教会で流してもよさそうな無垢な純粋さを感じさせる綺麗なものになっていますね。そこから早速のキラーチューンとなる疾走メロパワナンバーの#2.さくらへ。綺麗でキラキラしたシンセと荒いギターでドコドコと疾走。非常にシンフォニック要素の強い直球なメロパワナンバーではありますが、メロディーは何処か儚い和風の世界観があってすごくいいですね〜。特にサビ裏での桜の花びらがひらひら落ちる様を思わせるキラキラしたシンセは本当に秀逸です。メロディーや世界観、失恋と桜を結びつけた儚くノスタルジーな歌詞が凄く好みというのもあって管理人がRaphaelの楽曲の中でも特に好きな楽曲の一つです。

#3.小夜曲〜悲愴〜はのっけからクラシカルでクサクサなギターと共にドコドコ疾走するメロパワナンバー。日本人ならではと言えるようなやり過ぎで哀愁溢れるクサさがあるのはもちろん(苦笑)、特にギターがネオクラらしいフレーズだったりを連発しているのも好印象です。この曲自体が、ベートーベンの有名なピアノ・ソナタ「悲愴」の第3楽章からフレーズを拝借しているため、原曲と同じくクラシカルで情念漂う哀愁が漂っています。#4.花咲く命あ限りは彼らのメジャーデビューシングルとなったクラシカルでクサクサなメロパワナンバー。ギターの華月はこの頃ちょうどHelloweenを始めとしたジャーマンメタルを愛聴していたらしく、その影響がもろに出ていますね。特にメロディーのクサさの質がジャーマンメタルのそれに近い暑苦しく(笑)、やや土着的な哀愁があります。サビまでこのクサいメロディーでドコドコと疾走して間奏では神秘的なシンセソロを挟みます。そしてさらに2番のサビメロの後はブラームスのハンガリー舞曲第5番で出てくる有名なフレーズをそのままギターソロに引用というネオクラ好きにはたまらないことをやってくれますね〜。歌詞もRaphaelらしい大人になっていくことの卑しさを歌っていて、メジャーデビューシングルに相応しい文句なしのキラーチューンです。

#5.ピーターパン症候群はドラムの音とギラついたシンセの音からドコドコ疾走するダークな疾走メタルナンバー。疾走はしているものの時がたち大人になることを過度に拒否しつづける歌詞も相まって、非常に退廃的でダークな雰囲気を放っています。しかし、この歌詞は特に大人になった人にはグサリとくる歌詞ではないでしょうか。「等身大の自分に嘘をついて 汚い物に憧れて手を伸ばす 誰がしようと僕はしないんだ 汚れた誘惑に魅力はない」とある種Raphaelのバンドコンセプトである「等身大の自分たち」というのをそのまま表現したような曲だと思います。間奏は轟音のメタリックな速弾きギターソロの裏でクラシカルなピアノが聞け、そのあとは綺麗なシンセソロもあり、ラストは子供達の声も「大人になんかなりたくない!」と一緒に歌い終了です。#6.promiseはシングルとしてリリースされたクリーンで綺麗な世界観と突き抜けるようなキャッチーさが特徴のストレートなメロディアスナンバー。最初のシンセをバックに伸びやかに舞うギターソロ、サビではキャッチーさを持った耽美ながらも爽やかなメロディーを聞かせてくれたりとこのアルバムの中でも一番シングルらしい曲ですね。最後のYUKIの裏声がまた綺麗で管理人的には癖になります(笑)

#7.ハックルベリーの恋はこれまでの流れを一変させるカントリー風味ののどかな曲。ここまでメタリックな演奏を活かしたメロディアスナンバーが多かっただけに結構意表を突かれますが、アルバムのいい箸休め的な曲になっているのでしょうか。アコギや笛の音は田舎ののどかな牧場を思わせますが、メロディーは相変わらずキャッチーで耳に残るあたり彼らのメロディーセンスのすさまじさはどんな曲でも活きるな〜と感心させられます。#8.eternal wish〜届かぬ君へ〜は1stミニアルバムのLILACに収録されていたバラードの再録です。アレンジ的に大きな変化はありませんが、演奏も厚みが増していてギターソロもより叙情的になっていますし、YUKIのボーカルもより丁寧に歌っている感があって非常にいい再録だと思います。管理人的にはこちらの方が好きですね。

#9.Holy missionはここで再び待ってましたの疾走メロパワナンバー。厳かなシンセの音から疾走し、「襲い来る魔物を切る〜」、「今こそ聖剣を振りかざし 遥かなる栄光へ〜」といった歌詞から明らかにRhapsody系の匂いをプンプンと放っています(笑)歌詞のとおり、今までの湿った哀愁メインのメロパワナンバーとは違い、特にサビメロは雄々しい戦いを歌うポジティブな哀愁を感じさせます。ギターソロもピロピロと速弾きしていますし、こういうのが好きな人はたまらないでしょうね(笑)

十八番のメロパワナンバーを中心に勢いを感じさせる楽曲が揃えられたアルバムになっていますね。演奏はやはりまだ荒さがあるものの、このメロディーやアレンジの前ではそれも些細な問題と思わせてしまうほどです。そして何気に広い素養を見せる楽曲からはさらなる可能性を感じさせるだけにつくづく解散が惜しいバンドだな〜と思います。今も現役だったらきっともっと大きなバンドになっていたことでしょう。

今作は特にメロスピやメロパワ、クサメタルファンの方には騙されたと思って是非聞いていただきたい作品ですね。また、今のVersaillesや摩天楼オペラがやっている音楽のヴィジュアル系での原型ともいえる音というのもあって、昨今のヴィジュアル系メタル好きの方にはルーツを辿るという意味でも聞いていただきたい所です。

 

 

卒業               (2000)                                            

                                                                                       

76点                                         

1.旅立ち〜Prologue〜

2.Lost Graduation

3.Teenage〜卒業〜

4.Lost Graduation(サイレント・ヴァージョン)

5.旅立ち〜Epilogue〜

 

 

 

ヴィジュアル系バンドであるRaphaelの3rdミニアルバム。

前作のmind soapで満を持してメジャーデビューしたRaphael。さらに自分たちの年齢を初めて公表したのもメジャーデビューしてからでした。しかし、一介のメジャーデビューしたバンドである以前に当時の彼らはまだ年齢的には高校生。そして、メジャーデビューの翌年には高校に通っていれば高校をちょうど卒業する年齢でした(当然ながら、メンバーはバンド活動のために高校を中退しています)そんな訳で、彼らは日本武道館にて自分たちの卒業式という名目でのライブを執り行い、その後にリリースされたのがまるで卒業文集のような形の今回のミニアルバムです。

今作も楽曲自体は相変わらずのRaphael節といったところですが、ある種メンバーたちが完全に自分たちのために作った記念の作品という事もあってか、楽曲の少なさも相まってややボリューム不足な面は否めませんね。

#1.旅立ち〜Prologue〜はクラシカルで叙情的なピアノと神聖さすら感じさせるシンセの綺麗なメロディー、さらに壮大に盛り上がる展開が耳を惹くインスト。メロディーはやはり文句なしの美しさながら、卒業式らしい雰囲気がある種出ていると言えば出ているのかもしれません。#2.Lost Graduationはドラムソロから始まり、ノスタルジーを演出するピアノと控えめなバンドサウンドが絡み合う哀愁メロディアスチューン。物悲しくも侘しい雰囲気とフックあるメロディーが、さらに間奏はアコギによるギターソロとこれまでのRaphaelにはない新しい一面をのぞかせる楽曲になっていますね。歌詞は卒業ということで見慣れた校舎を懐かしむ描写もありますが、そこでの自分がどんな存在意義を持っていたか、さらには人生の苦悩や孤独感を歌ったかなりネガティブさの目立つものになっています。ある種、彼らの学校生活で感じていたことを若干投影している面があるように思います。

#3.Teenage〜卒業〜は一転して、明るく爽やかなシンセやピアノ、ベースソロから始まるPOPなメロディアスチューン。サビの優しげで綺麗なメロディアスメロディーはまさに彼らの白くピュアな一面が前面に出ていますね。「苦しかったこと 悲しかったこと この日の喜びにすべてを変えて 僕は強くなったから この日を迎えられたから 今から」という歌詞にもあるように、おめでとう一色な訳ではなく、重い苦悩を描いている描写が多く、だからこそこういうポジティブなメッセージがより映えるような気がします。#4.Lost Graduation(サイレント・ヴァージョン)は2曲目のアレンジ違いで、ボーカルとピアノのみによる静かなアレンジになっています。原曲以上にしんみりとしたアレンジになっており、管理人的には原曲よりこちらの方が曲に合っているようで好きかなという印象です。

#5.旅立ち〜Epilogue〜はアルバムの締めとなる短いインスト。同じリズムとメロディーを繰り返すピアノと重厚なシンセでしっとりと締めています。

卒業というテーマをRaphaelらしいセンスでまとめたアルバムと見れば中々の出来と言える作品ではありますが、いかんせん圧倒的なボリューム不足で、ファンの方がコンプリートのために聞くというぐらいの本当にメモリアル的な作品と捉えてもらった方がよさそうではありますね。まぁ、Raphaelをこれから聞き始めるという人もほとんどいないとは思いますが・・・

 

 
Singles

Raphael Singles                    (2001)                                            

                                                   

88点                                         

1.White Love Story

2.夢より素敵な

3.Sweet Romance

4.Follow you

5.花咲く命ある限り

6.「・・・」"ある季節のレクイエム"

7.eternal wish〜届かぬ君へ〜

8.窓際の夢

9.Promise

10.cadenza

11.lost graduation

12.Evergreen

13.Gabet〜祈り〜

14.秋風の狂詩曲

15.不滅華

 


ヴィジュアル系バンドであるRaphaelのベストアルバム。

その類稀なるメロディーセンスと若さを武器にメジャーシーンでも順調に活躍を見せていたRaphael。そんな中で晴れて自分たちも高校卒業の年を迎えたということで、本当にこれからという時にメインコンポ―サーであったギタリスト華月が睡眠剤の多量接種を原因に急逝。ファンやメンバーを大きな悲しみと衝撃が襲いました。バンドの作曲、作詞はもちろんコンセプトや世界観の構築でも大きな役割を占めていた華月の死は他のメンバーにとってもバンドを続けていく上でどうしようもないほどのダメージだったのでしょう。2000年から翌年にかけて華月抜きの最後の全国ツアーを行い、Raphaelは活動休止を宣言。こうして彼らはその勢いとは裏腹にあまりにも短い時間で表舞台から姿を消していきました。

そして、華月の死後。彼がRaphaelで気に入っていた曲を収めた企画アルバム「不滅華」と今まで出してきたシングル、及びカップリング曲を収録したこのSinglesがリリースされました。さて、今回はこのSinglesの方のレビューとなりますが、この2枚は重複している曲がかなり多いため、よほどのコレクターでなければどちらか一枚手元にあれば十分といえる内容になっています。強いて言えば「不滅華」の方はアニメ「タッチ」のオープニング曲のカバーが収録されているのが唯一のポイントといえるでしょう(これは不滅華にしか収録されていません)

そういう訳で彼らのシングルを全て集めているような方であれば、今作を買う意味は薄いのですがRaphaelに興味を持ったので聞いてみたいという方に関しては内容の充実度からいっても管理人的にはこちらのSinglesの方がオススメです。内容の方もシングル曲を集めただけあって今までの彼らの集大成と言える佳曲が目白押しのベスト盤、および入門盤として申し分ない物になっています。

#1.White love Storyはホーリーなキラキラキーボードや鈴の音がクリスマスを思わせるPOPなメロディアスチューン。歌詞も恋人たちのクリスマスを微笑ましく描いていてまさにクリスマス一色ですし、間奏やラストでは神聖なクワイアも登場。これによって映画音楽家のようなスケール感を感じさせますね。サビメロもPOPで綺麗とRaphaelのピュアで無垢な一面が存分に発揮された曲でしょう。#2.夢より素敵なは彼らの代表曲の一つでもあるハートフルでPOPなメロディアスチューン。これもともかくメロディーか綺麗で聞きやすく、キラキラとしたシンセもその綺麗さを増幅させています。それに加えてギターがまるで歌うように泣きのフレーズを連発しているのもメタラーの方々には響くものがあるのではないせしょうか。メタルな面がクローズアップされがちな彼らですが、やはり彼らの最大の武器はそのメロディーセンスと改めて実感させられる曲です。

#4.Sweet Romanceはタメの効いたバンドサウンドで走るヴィジュアル系らしいメロディアスチューン。ドラムの音が何となくバタバタとしていてやかましい印象はありますが、サビメロは適度なクサキャッチーさと至ってノーマルな90年代のヴィジュアル系らしい曲ですね。#6.「・・・」”ある季節のレクイエム”はまるでこの時代のRPGゲームのOPに使えそうなシンセ(笑)から走り出すメロディアスチューン。こちらも特に捻りのない直球なヴィジュアル系らしいメロディアスチューンですが、ギターソロはもたつきつつも中々頑張っている印象です。

#12.Evergreenはまるでメロコアと言えるようなバンドサウンドで疾走する爽やかなメロディアスチューン。彼らにしては珍しくシンセの音がかなり控えめ、さらにメロコアらしい青臭さに満ちた疾走感があってこれはこれでとても新鮮ですね。そしてこれもまた歌詞がいいですね〜。いわゆる大人になった後に学生生活にもう一度戻れたら・・・という内容なんですが、「何より輝く時代は誰よりも早く 過ぎ去っていく儚い物 戻れない夢」、「嫌いだったあの場所に 今は戻りたい」と学生生活から離れて聞くとグサリとくるフレーズがとても多いように思いますね。この曲はまさにその時代のメンバーの心情そのものを描いていたのでしょう。#13.Gebet〜祈り〜は作曲者である華月がChildren of bodomなどのメロデス勢に影響を受けて作ったと語っている疾走メタルチューン。ノイズのような音からへヴィかつメタリックなリフで疾走。クリーンボイスと男臭い掛け声の掛け合いで暑苦しさを演出し、呟くような声からキャッチーかつ必殺のクサメロが詰まったサビメロへ。裏のシンセも北欧メタル的透明感を演出していて秀逸ですし、ギターソロもキラキラシンセと共にネオクラ的フレーズを披露しており特にメタラーの方々は歓喜のキラーチューンと言えるでしょう。

#13.秋風の狂詩曲は彼らの最後のシングル曲となったヴァイオリンを大々的にフューチャーし、ケルトの民族音楽を髣髴とさせる必殺のバラード。まずもってのっけからヴァイオリンのフレーズが秋の侘しく儚い哀愁をこれでもかと放ちまくっていて凄まじいことこの上ないんですが、サビメロもまた絶品の美しさで管理人がRaphaelの楽曲で1、2位を争うほどに好きな曲ですね。と同時にこういう曲までやってのけるあたり彼らには本当に様々な音楽の素養があったんだな〜と感心せざるを得られません。#14.不滅華は物悲しい哀愁を漂わせるサビメロから始まるメロディアスチューン。これは前述の秋風の狂詩曲のカップリングだった曲ですが、こちらも秋らしく侘しい哀愁があっていいですね〜。適度な疾走感もあって、一昔前の日本の歌謡ロックを思い起こさせます。

楽曲のボリュームも中々ですし、Raphaelがどんなバンドなのかというのが充分に伝わる一枚になっています。Raphaelの音源でなにから聞こうか迷ったら「とりあえずこれを聞いてください」と言い切れるほどにある種無駄のないお得なアルバムと言えるでしょう。しかし、こうして改めて聞くと本当に様々な音楽ジャンルを柔軟に取り入れている姿勢が垣間見えて、もしあと数年でも活動していたら・・・と考えると本当に惜しいバンドですね。

彼らの音楽はこれからも特にティーンエイジャーの心には深く響いていくだろうし、そういう年代の人には是非聞いてほしいと(勝手な押し付けになっちゃっていますが・・・)管理人は思って止みません。

 
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