GILIA           (2008)                                            

                                                

83点                                         

1.Plastic cell

2.alkaloid showcase

3.Twilight parade

4.sara

5.虚空からの手紙

 

 


ヴィジュアル系バンドである摩天楼オペラの1stミニアルバム。

ヴィジュアル系メタルが注目を浴び始めた年に「現代的なものと伝統美の融合」をコンセプトに活動を始め、今やその手のジャンルの代表格という地位まで上り詰めたバンドがこの摩天楼オペラです。メンバーはJenivaというバンドで活動していたボーカルの苑を中心に結成され、現編成はメタルバンドMasterpieceの元メンバーであるギターのAnzi、ドラムの悠、盟友でありよきライバルであったDELUHIの前身バンドGRAVE SEEDでベースを務めたいた耀、Anziと共に途中加入となったキーボードの彩雨の5人編成となっています。

近年のヴィジュアル系メタルシーンではパイオニアと言えるVersaiilesからは才能を見いだされ、同じ事務所に誘いを受けて共に活動していたことから彼らの後輩バンドとして親交があり、同時期にデビューしたDELUHIとも共に2マンツアーを行うなどインディーズ時代でもヴィジュアル系メタルの中心として活躍。2011年にはメジャーデビューを果たし、現在もシーンの第一線で活動しています。

そんな彼らの特徴としては流石に元メタル畑の人間が集まっているせいか、本格的にメタルに精通した確かなスキルとシンフォニックメタル、ネオクラをキチンと理解していると思わせる楽曲作り、キーボードを活かした多彩な音作りと多様性、ヴィジュアル系特有の癖を持ちながらメタルのボーカル顔負けのパワフルな声量を持つ苑のボーカルでしょう。それでいてヴィジュアル系の王道もちゃんと理解している部分があり、キーボードを入れた編成と高度なスキルからさながら「シンフォニックメタル路線になった現代版Janne da arc」と言えなくもないように管理人は思いますね。

さて、ちょっとレビューが前後してしまいましたが今作は彼らが上記の編成となって初めてリリースしたミニアルバムになります。楽曲自体はまだ荒削りさが目立ちますし、こういったシンフォニック系のヴィジュアル系バンドではまだよくあると思わせる部分があるものの、流石にスキルは確かなものを始めから持っているためチープさはあまりなく、本格的なメタルの素養を見せつけてくれていますね。また、ありがちと思わせる中にも部分部分でシンフォニックメタル、ネオクラ等を理解してるな〜と思わせるアレンジや曲展開が光っており、今後の可能性を感じさせるには充分な作品になっていますね。

#1.Plastic cellはキラキラキーボードとシリアスなピアノ、へヴィリフで始まるミディアムチューン。歌が入るとやや畳み掛ける様に走り、サビでは哀愁を帯びた壮大でシリアスな暗さを持ったメロディーを聞かせてくれます。苑の裏声も綺麗に映えていていますし、このメロディーが管理人的にはかなり好みです。そして、この曲の白眉はサビ後のノイズをかけてしっとりと聞かせるピアノソロですね。ベートーベンのピアノ・ソナタ「月光」のフレーズを引用しており、重厚で上品な雰囲気を演出しています。そこからベースが絡み付き、へヴィリフを強調した後にギターソロという展開もいい具合に決まっており、シンフォニックメタルとヴィジュアル系の王道の双方をよく理解していることが伺えるキラーチューンです。#2.alkaloid showcaseは彼らのインディーズ時代からの代表曲の一つと言えるシンフォニックなメロディアスチューン。クサメタルライクなキーボードを大々的にフューチャーし、シャウトとクリーンボーカルをかけあうように混ぜて走った後にクサキャッチーなサビメロへ持っていくというお手本のようなヴィジュアル系らしい王道曲になっていますね。ギターソロもシンプルながら泣きの要素を感じさせ、キーボードの多彩な音色を活かしたアレンジも幅を与えており、彼ららしい要素がたっぷりつまった代表曲に相応しい一曲でしょう。

#3.Twilight paradeはドラムソロから始まるメロディアスチューン。へヴィリフを強調させる部分はライブではジャンプしたくなるノリがありますが、歌が入るとミディアムテンポになりベース、キーボードで淡々と聞かせます。しかし、サビではやや走り気味になりキャッチーなメロディーを聞かせてくれます。これもヴィジュアル系らしい曲ではありますが、ギターソロはネオクラらしい速弾きを見せてくれるのが彼らならではといった所でしょうか。#4.saraはピアノと色っぽい吐息から始まり、エモーショナルなギターとピアノ、キーボードが美しい絡みを見せるバラード。ボーカルが入るとピアノとドラムで淡々と聞かせ、空間の広がりを感じさせる優雅なキーボードアレンジを挟み、サビではしっとりと優しげなメロディーを聞かせてくれます。さらにエモーショナルで劇的なギターソロも聞きどころのひとつでしょう。これもこの手のジャンルではありがちなバラードではありますが、今までの楽曲と同じようにメタルの素養を随所で感じさせています。

#5.虚空からの手紙は再びドラムソロから始まるもすぐにサビのキャッチーでPOPなメロディーから始まるヴィジュアル系らしいストレートなメロディアスチューン。サビを押し出したわかりやすい展開とこれもまぁ、わかりやすいぐらいに王道過ぎるんですが(笑)、それ故にこれまでの楽曲では一段と懐かしい感じですね。しかし、やっぱり管理人的にこういう曲は素直に弱いですね(苦笑)

楽曲のタイプも王道に沿った楽曲が全てのためやはり新鮮味には欠けますが、質自体は中々の物があると思います。その中でも随所で光るメタル魂が彼らならではの個性と言えるでしょう。彼らの音源の中では王道好きには一番好まれるかもしれませんが、管理人としてはキーボードのアレンジ力などもいい物を持っているだけにもうちょっと冒険心が欲しいな〜という所ですね。しかし、それは今後の活動次第ではどうにでもなっていく部分もあるため、最初のまとまった音源として見れば十分に合格点と言えるでしょう。

 

 

ANOMIE             (2009)                                            

                                                       

72点                                         

1.Seed of Anomie

2.Dolce

3.Anomie

4.悲哀とメランコリー

5.月の砂

6.電脳パラノイア

7.EVE

8.眠れる夜

9.Last  game-Anomie edition-

10.Sexual entrapment

11.Utopia

12.瑠璃色で描く虹-Anomie edition-

13.本質へと辿る愛

14.Eternal Symphony


ヴィジュアル系バンドである摩天楼オペラの1stフルアルバム。

前作ではヴィジュアル系とシンフォニックメタルの双方の要素を上手く取り入れた楽曲作りと確かなスキルでヴィジュアル系ファンはもちろん一部メタラーからも注目を浴び始めた摩天楼オペラ。前作以降もハイペースでシングルを順調にリリースしていき、約1年後に遂に待望のフルアルバムがリリースとなりました。

管理人もこれまではツボを突かれる楽曲も多かったため注目していたバンドですし、非常に楽しみにしていた訳ですが、いざ蓋を開けてみると何とも言えない微妙さが残るアルバムというのが正直な感想でしたね。楽曲の幅を広げるためなのか、現代のミクスチャーロック系のアレンジを始めとした他のジャンルを意識したアレンジを取り入れた楽曲も今回は目立って増えているんですが、それがどうも付け焼刃というか煮え切らないアレンジに聞こえてしまう点に加えて、元々得意としているシンフォニックメタル路線の楽曲が今回はかなり減っているのも大きなマイナスポイントになっているような気がしますね。

#1.Seed of Anomieは心臓の音と男性のオペラ歌唱やクワイア、笑い声がシリアスでホラーな暗さを演出するインスト。そこから気怠いニューウェイブ系の雰囲気漂うギターリフから始まるミディムチューンの#2.Dolceへ。ベースとボーカルで淡々とエロティックな歌詞を歌い上げ、サビでは広がる様に力強いメロディーを聞かせてくれます。間ではラップ気味に歌う箇所も出てきますが、得意とする音楽性とはまるで正反対な楽曲だけにこういうアレンジをこのバンドがわざわざやる必要があるのか?という部分が非常に疑問に思えてしまいますね。#3.Anomieはソプラノボーカルがしっとりした質感を放つもすぐにへヴィリフが切り込み走り出すメロディアスチューン。歌詞も含めて若々しいアッパーさがありますし、サビは王道で聞きやすいキャッチーさありとメタル要素というよりもどちらかというとヴィジュアル系寄りのノリが優先されている感じですが、これは素直にいいと思える楽曲ですね。

#4.悲哀とメランコリーは電子音的なキーボードと加工されたボーカルから始まる現代的なメロディアスチューン。ややがなる様なラップ風の歌い方とサビのキャッチーさ、反骨精神に溢れた歌詞が特徴で、これは管理人的にライブでは大好きな曲ではあるんですが、音源の中で見るとこのバンドの方向性にそれほど合っているとは思わない楽曲ですね。#5.月の砂はしっとりと上品なピアノとボーカルから始まるバラード。このピアノのシンプルながら美しい旋律とサビの壮大で広がりのあるメロディー等は管理人的に結構好きな雰囲気なんですが、途中から切り込んでくる加工されたリフと電子音的なシンセがどうも楽曲の雰囲気を壊している感じがしてイマイチな印象です。もう少しシンフォニックさを際立たせたアレンジだったら・・・と思ってなりません。

#6.電脳パラノイアは電子音的なシンセから瑞々しいキーボードとへヴィリフで押していくメロディアスチューン。早口でまくしたてる様に歌い上げた後に、サビメロへ突入。ベースソロから電子音キーボードをフューチャーしたソロとこれもあまりに現代的なノリになりすぎてちょっと違和感を感じますね。#7.EveはメンバーたちがChirdren of botomからの影響があったと公言したメロディアスな疾走メタルチューン。ノイズのようなギターからシャウトを合図にザクザクと疾走し、ヘドバンを誘発しますね(笑)ここらへんは確かに近年のCOBに近い雰囲気を感じさせます。その後はクリーンボーカルとシャウトを織り交ぜ、キャッチーでメロディアスなサビメロを聞かせてくれます。ギターソロはピロピロと速弾き全開でそこからキーボードによるソロ、最後は怒涛のツーバスで疾走と楽器隊も頑張っていますし、疾走感とキャッチーさを大事にしていていですね〜。

#9.Last Game-Anomie edition-はクサキャッチーなサビメロから始まるメロディアスチューン。サビメロは程よいクサキャッチーさがあっていい感触なんですが、やはりがなるようなラップ風の歌い回しがまた微妙なミスマッチ感を管理人は感じてしまいます。サビメロが結構好きなだけに惜しいですね〜。#10.Sexual entrapment叩きつけるようなリフとゴリゴリなベースソロ、英詩の語りの後のシャウトを合図に走り出すミクスチャーロックチューン。ノイズで加工したボーカル、シャウトを多用したサビが特徴ですが、これもあまりに現代的なノリ過ぎてなんでこのタイプの曲をやったという印象です・・・。

#12.瑠璃色で描く虹-Anomie editon-は彼らの初期のシングル曲であるシンフォニックなメロディアスチューン。北欧メタルを感じさせる寒々しくも荘厳なキーボードの音色、クリーンボーカルとシャウトの掛け合いという王道なパターン、クサキャッチーなサビメロにシンプルながらエモショナルに満ちたギターソロと彼ららしさが凝縮されたキラーチューンです。今アルバム用のミックスになっていますが、違いとしては最初のイントロがカットされたことぐらいで基本的にはほとんどそのままですね。こういう個性を活かした曲が今作はあまりに少なすぎたため、この曲はかなり浮いているように思います。#14.Eternal Symphonyは通常盤のみに収録されている曲で、待ってましたの本格的なメロスピチューンです。楽曲のタイトルからしていかにもなメタル臭がするんですが(苦笑)、その期待を裏切ることなくエモーショナルなギターソロをバックにツーバスを踏みまくってドコドコと疾走。ボーカルが入るとさり気にテクニカルなフレーズを連発するベースが存在感を放ち、ポジティブでクサいメロディーのサビメロへ。このメロディーもややキャッチーすぎる部分を除けば完全にクサメタルのソレですし、苑もその声量をいかんなく発揮。間奏もテクニカルで歌うようなギターソロが待っていますし、メタラーの方々は歓喜のキラーチューンですね〜

楽曲の幅を広げようとする意志は伝わりますがあまりにも急激に舵を切りすぎた感があり、アレンジなどがバンドに合っていない物を無理にやってしまっていると感じる曲がかなり多いのが非常に残念ですね。あまりにも変化を求めすぎた結果、本来の持ち味を発揮できている曲がほとんどないため(逆にそれらはすべてキラーチューンと言える出来ではありますが・・・)、管理人のようなこれまでの音楽性を評価してきたリスナーからするとファンから自分たちがどんな音楽を求められているかをもう少し考えてほしいかなと思ってしまう部分があるように思います。

ちょっと辛辣な評価にはなりましたが、まぁ、次作に期待ということで・・・

 

     

COUPLING       COLLECTION 08-09             (2009)                                            

                                                 

85点                                         

1.honey drop

2.忘却セルロイド

3.蜃気楼

4.輝ける世界

5.ダチュラ

6.天上への架け橋を

7.Faust

8.ローンデイジー


ヴィジュアル系バンドである摩天楼オペラのシングルのカップリング曲を集めたアルバム。

さて、初のフルアルバムとなったANOMIEが個人的にはイマイチだった摩天楼オペラですが、同年にはさらにこれまでのシングルに収録されたいたカップリング曲を収めたミニアルバム以上フルアルバム未満といった作品をリリースします。もうすでに発表されていた曲ばかりなのでシングルを逐一聞いているリスナーからすると新鮮味はない訳ですが、アルバムしか買わないリスナーからするとこういう企画アルバムは嬉しいところではないでしょうか。で、作品としての話となるとANOMIEよりもずっと自分たちの得意な音楽性というのがきっちり備わった楽曲が多く、管理人的にはいくら既存曲ばかりとは言えども作品としては余裕でこちらの方が好きだったりします(苦笑)

#1.honey dropはやや小さく加工されたリフからクサメタルライクなキーボードとゴリゴリとしたリフが切り込むヴィジュアル系らしいメロディアスチューン。サビの懐かしいぐらいにクサキャッチーなメロディーとキーボードのアレンジが非常に秀逸、未練タラタラな歌詞もらしい感じでファンからも人気の高い一曲です。#2.忘却セルロイドは前曲とは雰囲気は被りますが、シャウトを合図にドコドコと疾走するシンフォニックメタルチューンです。これもメロディーがクラシカルかつクサキャッチーな哀愁がありますし、特にサビのドコドコと疾走しながら歌い上げるメロディーが管理人のドツボですね〜。北欧メタルライクなキーボードアレンジも好みですし、疾走感もバッチリで摩天楼オペラでも管理人がトップクラスに好きな楽曲の一つです。

#3.蜃気楼はクラシカルなピアノと重厚なキーボードアレンジ、ギターリフがシンフォニックなシリアスさを演出するバラード。バラード方面での彼らの個性がしっかりと発揮された曲で、サビメロはどちらかというと歌謡曲的なクサさがありますね。歌詞は本当どこの昼ドラだという感じですが(苦笑)、エモーショナルな速弾きギターソロとシリアスな雰囲気作りもあいまってこれも管理人的にはとても好きな曲です。#6.天上への架け橋をは穏やかなピアノとキーボードでしんみりと聞かせるバラード。淡々と、しかししんみりとシンプルに聞かせる最初から徐々に楽器隊が加わっていき、ドラマティックな盛り上がりを見せていきます。最後の泣きのサビメロが転調する所で劇的さは最高点に達し、ラストはアコギによるソロとピアノ、ドラムで静かに終了するのもメタルを心得ている彼らならではといった所でしょう。

#7.Faustはチェンバロ系のキーボードと重いギターリフからクワイアと共に疾走するダークなシンフォニックメタルチューン。ねっとりと歌うボーカルのせいもあるのでしょうが妖しくもゴシックな雰囲気が満載で、サビメロはテンポダウンし、広がりのあるシリアスで妖しいメロディーを聞かせてくれます。ラストのパワフルな苑のハイトーンも凄まじい激情を演出していますね。#8.ローンデイジーはキラキラのファンタジックなキーボードとストリングス、そこから明るくPOPなサビメロで始まるPOPチューン。摩天楼オペラの曲でここまでハートフルな雰囲気の楽曲は今までないタイプですが、この弾けるようなPOPなメロディーが管理人的にはまたかなりツボだったりします。間奏ではピアノ、シンセとボーカルでしんみり歌う部分もあったりというのもいい展開ですね〜。

彼らが得意とする方向性の楽曲が多いためか、どれも粒ぞろいの楽曲が揃えられていますね。こうして見ると下手に冒険し過ぎたANOMIEとはかなり対照的と言えるかもしれません。方向性の模索も大事ではありますが、彼らはもう少し自分の得意な路線を活かして少しずつ変化していく方がいいバンドになるんではないかなとこの作品を聞くと妙に思ってしまう部分があります。

 

 

Abyss             (2010)                                            

                                                               

86点                                         

1.INDEPENDENT

2.もう一人の花嫁

3.freill

4.coal tar

5.Double Clutch

6.フタリ

7.FInale..


ヴィジュアル系バンドである摩天楼オペラのメジャーデビュー作となる2ndミニアルバム。

今回から晴れてメジャーの舞台へ旅立った彼らですが、このミニアルバムは前回管理人がフルアルバムのANOMIEを聞いて抱えていた不安を見事に払拭しており、自分たちがどういう事が得意なバンドなのかというのをハッキリ音楽で主張できるようなメジャーへの気合いが十分に感じられる一枚に仕上がっています。

#1.INDEPENDENTはシャウトも交えたシンフォニックな疾走チューンで、サビメロは彼ららしく懐かしいメロディアスさがありまさに一発目には持って来いの曲ですね。間奏では各楽器隊それぞれがテクニカルな演奏パートを披露しており、カッコいいです。

次はPVも作られており本アルバムのリードナンバーといえるシンフォニックなメロディアスチューン#2.もう一人の花嫁へ。歌詞も場面を想像しながら聞くと中々切ない物がありますね。

#3.freillはジャジーでアダルトなノリが特徴のアップテンポ曲。歌詞はなんとなくJanne da arcのよく書くエロ歌詞に通じるものがありますね(笑)この曲は最後にボーカルの苑が正統派メタルやメロスピでよくやるビブラートを効かせた見事なシャウトを披露してます。

そして、今回のアルバムで個人的に一番のキラーチューンだったのが壮大で悲哀に満ちたシンフォニックバラードの#4.coal tarです。曲の起伏が激しいドラマティックな展開で、特に間のキーボードとボーカルのみで切々と歌った直後にギターソロが切り込む部分は本当に見事としか言いようがありません。こういうドラマティックな曲、管理人は大好きです。

いや〜、今回のアルバムはバンドの急成長ぶりに本当にいい意味でビックリさせられました。前作で曲の良さを殺してしまっている部分のあった曲のアレンジにも成長の跡が伺えるし、全てにおいて格段にレベルアップしています。

今後も彼らの成長には期待せずにはいられませんね。

 

 

JUSTICE          (2012)                                            

                                                    

88点                                         

1.Justice

2.濡らした唇でキスをして

3.落とし穴の底はこんな世界

4.Helios

5.Imerial Riot

6.Mermaid

7.21mg

8.Age

9.Just Be Myself

10.アポトーシス

11.ニューシネマパラダイス

12.絆

13.Designer Baby


ヴィジュアル系バンドである摩天楼オペラの2ndフルアルバム。

前作のAbyssよりメジャーデビューから1年を経て、数枚のシングルをリリースした後に作られた摩天楼オペラ待望のオリジナルフルアルバムがこのJUSTICEです。今までがミニアルバムやシングルばかりだったので、音源としては久方ぶりのオリジナルフルアルバムでしてファンも待ちに待った所でしょう。今回はメンバーの話によると東日本大震災以降作った楽曲がほとんどということで、歌詞も世の中に疑問をぶつけるストレートな歌詞の曲が多く、楽曲も摩天楼オペラというバンド名が示す世界観を遂に完成形に持っていった感があり、ようやく彼らの目指す音楽性が花開いたような印象を受けました。

#1.Justiceは今作のヘッドチューンでアルバム名を冠したシンフォニックメタルナンバー。キラキラのキーボードから荘厳なクワイアが登場し、重厚感を持ち疾走。クワイアのバックでのっけからギターがネオクラな速弾きギターソロも披露し、シビれさせてくれます。間ではボーカルの苑が艶やかに囁くように歌った後に、神聖なクワイアが入り、疾走するサビメロへ。メロディーもフックがあります。間奏はキラキラキーボードと一瞬のドラムソロの後にギターとキーボードのユニゾンバトルです。歌詞も人に合わせることなく、自分の中にある正義を貫くという意味の込められた歌詞で管理人は大好きです。

#2.濡らした唇でキスをしてはゴージャスな質感のクワイアと都会的でアダルティーな雰囲気が特徴的なミディアムチューン。歌の間でさりげなく聞こえるジャジーなピアノ、ややがなるような歌い回しでクサキャッチーなメロディーを歌うサビメロ、エロティックな歌詞とどことなくJanne da arcっぽいですね。#3.落とし穴の底はこんな世界はシングルとしてリリースされたハードさの目立つシンフォニックメタルナンバー。荘厳なクワイアから幕をあけ、シャウトと共に緊張感のあるタイトな演奏が聞けますが、歌が入るとふと静かになりボーカルも囁くように歌います。しかし、すぐにバンドサウンドが爆発し、クサキャッチーなメロディーのサビメロへ。しかも、1番から2段がまえのサビメロで、2回目は入りのドラムがやや控えめになるせいかより壮大に聞こえます。これも歌詞が人への憎しみを露骨にさらけ出していて、いいですね。今のヒットチャートへのある種アンチテーゼのようにも聞こえます。

#4.Heliosもシングルとしてリリースされた壮大なシンフォニックバラード。静かなピアノの音からへヴィなリフとクワイアが登場し、重厚で壮大な世界観に引き込まれます。歌はピアノとギターリフを活かしつつも、壮大で哀愁漂うサビメロが印象的です。間奏は再びピアノソロが登場するも重厚なクワイアが切り込み、エモーショナルで渋いギターソロへ。ラストは重厚なドラムとサビメロ、強烈な哀愁メロディーが怒涛の劇的さを見せてくれます。#5.Imperial Riotピコピコしたキーボードとテクノ風に加工されたボーカルが現代風な質感を放つもすぐさまクワイアが入り、彼ららしくなるアップテンポ曲。ややラップ調の歌い回しのボーカルとメロディアスなメロディーは典型的な現代のヴィジュアル系らしさがありますが、クワイアや間奏のキーボードソロはネオクラらしいメロディーで、こういう所が摩天楼オペラ独自の個性をと言えるでしょう。

#6.Mermaidは瑞々しさや現代風の電子音を取り入れた多彩なキーボードとへヴィなリフが特徴なPOPナンバー。英詩でラップ調に歌いまわす個所など、これも前曲に続いてややモダンで現代的な要素が取り入れられた曲になっていますが、サビメロは開放感のあるPOPでキャッチーなメロディーを聞かせてくれます。#8.Ageは瑞々しいキラキラキーボードが心地よい典型的なヴィジュアル系らしいメロディアスナンバー。サビメロから始まるわかりやすい展開と90年代のヴィジュアル系にありそうな古臭いメロディーは聞く人によっては懐かしささえ感じるかもしれない楽曲で、こういう昔ながらのメロディアスなタイプの曲が好きな管理人は当然ツボです(笑)

#10.アポトーシスは今作随一のキラーチューンと呼べるシンフォニックメロスピナンバー。まるでゲームのBGMかと言わんばかりの壮大なストリングスから、浮遊感の漂うゴシックで中性的な女性の声をバックに疾走。歌が入るとメロディーがやはりクサく、サビメロはクサメタラー好みの哀愁を感じさせるクサキャッチーなメロディーを疾走しつつ聞かせてくれます。間奏のギターソロもこれまた哀愁を持った泣きまくりのギターを聞かせてくれますし、さり気にベースもテクニカルなフレーズを披露。ラストはサビメロを歌った後に転調して、再びサビメロを歌います。このラストの転調も哀愁が4割増しになって、管理人もノックアウトでした(笑)クサメタラーの方は間違いなく気に入るであろう、摩天楼オペラ渾身のシンフォニックメロスピチューンです。

#11.ニューシネマパラダイスは都会的でアダルティーなメロディーが聞こえた後にアップテンポに走る曲ですが、サビメロは一気にテンポダウンし、バラード調に哀愁を放つメロディーを聞かせてくれます。このサビメロは何となく歌謡曲的で、昭和的な古臭さを感じさせますね。ラストはこれも転調し、終末観を持った哀愁が漂います。

ともかくこれでもかと言わんばかりにクワイアが多用されており、前作のフルアルバムであるANOMIEで見せたモダンでミクスチャーな楽曲の練りこみ不足も、こういったクワイアを取り入れることにより彼ら独自の色をつけることに成功していますね。そう考えると本当にバンドとして成長したな〜としみじみ思います。ファンの多くが期待するシンフォニックメタルチューンも今回は目白押しですしメロスピ、シンフォニックメタル好きでヴィジュアル系OKの方には普通にオススメできるアルバムですね。

 

 

喝采と激情のグロリア

                                                 喝采と激情の               グロリア          (2013)                                            

                        

93点                                         

1.-overture-

2.GLORIA

3.Plastic Lover

4.悪魔の翼

5.Freesia

6.CAMEL

7.Merry Drinker

8.SWORD

9.Innovational Symphonia

10.永遠のブルー

11.Midnight Fanfare

12.喝采と激情のグロリア

 


ヴィジュアル系バンドである摩天楼オペラの3rdフルアルバム。

メジャーデビュー最初のフルアルバムとなった前作「Justice」はこれぞメジャーシーンのバンド!!と言える風格が漂った堂々たる作品となり、過去最高傑作というファンの方を始めとして他のレビューサイト様でも概ね好評の用で大きな反響を呼んだようです。若手ヴィジュアル系バンドでも屈指の実力派として知名度を上げてきている彼らですが、次なる手として自分たちの過去とこれからの希望を描く「喝采と激情のグロリア」をテーマに掲げ2枚のシングルをリリース。そして、このテーマの完結作としてドロップされたのがこのテーマ名を冠した今回のフルアルバムです。

作風の方は前作の延長線上とも言えるクワイアを多用した壮大なシンフォニックサウンドですね。しかし今作は壮大なテーマが影響しているせいか楽曲やアレンジもよりスケール感が増したように思いますし、楽曲の幅も広がりを見せてきているようでしてまた一回り成長したな〜という印象です。

チェロやヴァイオリンを始めとしたストリングスと荘厳なクワイアで神秘的で壮大な雰囲気を醸し出すかと思えばキーボードの多彩な音色を活かした打ち込みサウンドも顔を覗かせるインストの#1.-overture-から、今回のテーマの幕開けとなったシングル#2.GLORIAへ。へヴィなギターの音から疾走するメロパワナンバーで、これまでの摩天楼オペラにはない壮大でポジティブな生命力に満ち溢れていますね。サビメロはクワイアと共にポジティブでクサいメロディーを合唱風に歌うというRhapsody的手法が取られており、間奏はキーボードとギターによるユニゾンバトルとメタラー的にもおいしい展開も待っています(笑)彼らの新たなアンセムとなりそうな一曲と言えるでしょう。

#3.Plastic Loverはへヴィなギターリフとキラキラキーボードによるイントロがかっこいいメロディアスナンバー。メタルというよりはどちらかというと極々王道なヴィジュアル系メロディアスナンバーといった感じですが、それだけにサビメロの切ないメロディアスさやツタツタな疾走が管理人のドツボでして今作では管理人的に一番気に入っている曲です。#5.Freesiaはシタールの音と共にアラビアンな雰囲気をまとった疾走感のあるシンフォニックメタルナンバー。何というかこのKamelotやSymhony Xあたりの匂いがプンプンしている感じが管理人的に好きですね〜。サビメロも中々にクサい哀愁メロディーで、アコギによる速弾きソロも楽曲に見事にハマっています。

#6.CAMELはライターとタバコを吸う吐息の音が聞こえたかと思えばゴリゴリとしたベースソロ、へヴィなギターリフから始まる骨太なロックナンバー。シンフォニックな曲が主体な彼らにしては珍しく、キーボードは控えめでゴリゴリな重いギターリフを主体に作られた無骨なロック本来の醍醐味を押し出した曲になっていますね。曲もそうですが、管理人的にはこのアッパーで反骨精神あふれたバッドボーイズ的な歌詞や雰囲気が結構好きだったりします(苦笑)#8.SWORDは待ってましたのド直球なシンフォニックメロスピナンバーで、クワイアから刻みギター、ソプラノボーカルと共に疾走。サビはクワイアと共に勇壮なメロディーを合唱とこちらもRhapsody臭がかなり漂っていますが、これも好きな人にはたまらないでしょう(苦笑)間奏はベースソロからキーボードとギターによるユニゾンバトルと完全にメタルと言える曲展開で熱いですね〜。

#9.Innovational Symhoniaはシングルとしてリリースされたダークなシンフォニックメタルナンバー。クワイアからクサさを持ったフックあるサビメロで幕を開けるというシングルらしいわかりやすい展開でダークでゴシックな雰囲気ながらもスッキリしていて聞きやすく、ギターソロも中々に弾き倒しておりコンパクトながら摩天楼オペラの魅力がわかりやすく凝縮された一曲と言えるでしょう。#10.永遠のブルーはピアノとボーカルから始まるバラード。昭和の歌謡曲的な侘しい哀愁を醸し出していますが、途中から楽器隊が盛大に切り込みドラマティックで壮大な世界観になります。しかし、何より圧巻なのは間奏以降の後半部で泣きのフィーリングをこれでもかと携えたギターソロが涙腺を緩め、再度儚いサビメロへ。そこからさらに物悲しい哀愁にまみれまくった絶品すぎるメロディーを歌い、クワイアもメロディーを合唱。フェードアウトしてラストはしっとりとピアノで閉めるという非常に劇的な展開を見せるバラードになっています。あまりに練られた曲展開と雰囲気づくり、何よりその成長具合に度肝を抜かされましたし、彼らのバラードでは管理人的に会心の出来と言えるほどの名曲だと思います。

#12.喝采と激情のグロリアはアルバム名を冠した今作の集大成と言えるシンフォニックメタルナンバー。キレのあるギターリフ、クワイアで疾走したかと思えばピアノでふとバラード風になり、そこからポジティブで壮大かつクサいサビメロへ。さらに同じ展開からの次のサビメロでは何と2段構えとなり、より壮大さやポジティブさ、切なさが増すという贅沢っぷり(笑)ギターソロも歌うようなメロディーを大事にしたソロで、そこからクワイアとボーカルでサビメロを歌いラストは楽器隊も加わり転調して2段構えのサビメロへ。最後はアカペラでサビメロを歌い終了と何ともドラマティックな展開に満ち溢れたキラーチューンですね。

前作から順当にレベルアップしていることが伺える作品になっていますね。しかし、今回特に思ったのは楽曲の展開や構成力のスキルアップに目覚ましい物があり、それがクオリティをグンと引き上げる要因になっているように思います。同時期から活動しているバンドも多々いますが本当にその中でも頭一つ二つ飛び抜けてきている感があり、インディーズ時代から聞いている管理人としてはこのような進化の仕方をしていくのはいい意味で全く予想外でしたし、それと同時にとても感慨深いものがありますね。

今後どこまで進化していけるかがこれまで以上に楽しみになる力作です。

 
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