first soundscope 〜水のない晴れた海へ〜       (2001)                                            

83点                                         

1.水のない晴れた海へ

2.君の家に着くまでずっと走ってゆく

3.夏の幻

4.二人のロケット

5.巡り来る春に

6.HAPPY DAYS?

7.Mysterious Eyes

8.Rhythm

9.Holding you, and swinging

10.flying

11.千以上の言葉を並べても

12.wonder land

13.夏の幻(secret arange ver.)


日本のネオアコをルーツとしたJ-POPバンドの1stフルアルバム。

GARNET CROW。管理人の年齢の世代(現在の20代前半〜後半ぐらい)は名前ぐらいは知っているし何曲か知っているという方も多いと思う。そう、我々の世代の多くの人間が子供の頃に楽しみに見ていたであろうアニメ「名探偵コナン」で主題歌を何曲か歌っているあのバンドである。記憶が正しければ多分大半の地域では毎週月曜日の夜19:30〜20:00までの放送であったと思うが、管理人も毎週のように見ていた(笑)

話が横に沿れましたがこのGARNET CROWというバンド。タイアップが名探偵コナンを始めとしたアニメに集中しているためアニソンバンドと捉えられがちだが、実はプロの中のプロともいえる音楽クリエイター集団なんですよ。各々GARNET CROW結成前は、倉木麻衣を始めとした主に所属事務所であるビーイング系のアーティストへの楽曲提供、歌詞提供、編曲等を担当しており表には出ないながらも元々はそれでご飯を食べていた人たちなのである。

そんな訳で楽曲の制作に関しても役割分担が明確に決められており、作曲はボーカルの中村由利、作詞はキーボードのAZUKI七、編曲はもう一人のキーボードである古井弘人がほとんどの楽曲を行っている。ギターの岡本仁志は演奏に従事するのみとなっている(この人も作曲、編曲等はできるのだが・・・)

彼らの音楽はその暖かみのあるサウンドとは裏腹にどこかその中に無常観や憂いを感じさせる楽曲が多く、現在のJ-POPシーンでも独自の立ち位置を持ったバンドと言えるだろう。

説明が長くなってしまいましたが今回のアルバムは彼らの代表曲が収められた1stフルアルバムで我々の世代が知っているであろう「名探偵コナン」のタイアップ曲も収録されておりますが、彼らならではの世界観は既にこの頃から確立されています。

#1.水のない晴れた海へはのっけから彼らの独自性が存分に発揮されたミディアムナンバー。出だしの無機質なアコギのメロディーと冷たいピアノ、シンセの音からこの透明感がありながらどこか澱んだ曲の世界観にグイグイと引き込まれます。途中から挿入されるコーラスも管理人のツボを突きます。

#2.君の家に着くまでずっと走ってゆくは幻想的な明るさを持ったPOPナンバー。この曲はひたすらクリアで穢れのない綺麗な一曲ですね。この曲もコーラスがグッド。

#3.夏の幻は名探偵コナンのED曲にもなったアコギを活かした爽やかな曲。これは恋の甘酸っぱさの中にある不安や無常観を歌った歌詞が特にすばらしいですね〜、一番のサビの歌詞は管理人的にGARNET CROWの歌詞の中でも特に好きな部分です。

#5.巡り来る春には憂鬱とした暗さを持ったミディアムナンバー。これもGARNET CROWらしさ満載で、悲哀に満ちた儚くも哲学的な歌詞もステキですね。#7.Mysterious Eyesは「名探偵コナン」のOP曲にもなった彼らのデビュー曲にして代表曲。このアルバムではダントツにキャッチーで聞きやすい曲です。

#9.Holding you,and swingingは電子音的なシンセを配した独特のほの暗さを持った曲。サビメロは結構哀愁があって個人的に好みですし、アレンジもこの時代のビーイング系のアーティストらしくて好きですね。#10.flyingはこれもこのアルバムではキャッチーな部類の壮大な曲。歌詞はやはり人の無常観を歌った意味深な歌詞ですね。

#13.夏の幻(secret arenge ver.)は#3.夏の幻の別アレンジバージョンです。こっちの方がより普遍的なPOPとしてのアレンジになっているといっていいと思いますが、管理人的にはやはり原曲の方が好みです。

最初のアルバムからとてもディープな独自の世界観を見せてくれていますね。まだ完全に洗練されきっていないせいか正直これ以降のアルバムよりずっと灰汁が強いですし、メロディーなんかもキャッチーさがちょっと控えめで無愛想な感じです。

管理人的にはもうちょっと愛想が欲しいなという所ですが、曲の世界観やアレンジ力はこの頃からまだ完全に洗練されていないとは言え、凄まじい完成度を誇っているので「クセがあってもいいから独特のPOPが聞きたい!」なんて人にはとてもオススメのアルバムです。

SPARKLE〜筋書通りのスカイブルー〜                    (2002)                                                                   

          

96点                                         

1.夢みたあとで

2.call my name

3.Timeless Sleep

4.Pray

5.Naked Story

6.Last love song

7.スカイブルー

8.wish★

9.Please,Forgive me

10.Holy ground

11.Mysterious Eyes〜dry flavor of "G" mix〜(bonus track)

12.Timeless sleep〜Flow-ing surround mix〜 (bonus track)


日本のネオアコをルーツとしたJ-POPバンドの2ndフルアルバム。

前作ではその独特の個性的なサウンドでメジャーデビューを果たした彼ら。今回のアルバムは前作で管理人がもう少し欲しいと思っていた曲のキャッチーさやわかりやすさが増強され、かといって彼ららしい独自の個性が全く失われていないので管理人的には名盤と呼ぶにふさわしいアルバムになっています。

#1.夢みたあとでは彼らの代表曲の一つともいえるキーボードとアコギを活かした儚くも切ない泣きのバラード。歌詞はいわゆる失恋系だったり恋人とちょっと疎遠になってる歌詞なんですがこれも歌詞がいいですね。だたの未練ダラダラな甘い歌詞ではなく、人の無常観をさりげに歌っているあたりAZUKI七らしい詩です。

#2.call my nameはコーラスを活かした透明感のあるミディアムナンバー。アレンジも決してシンプル過ぎず肝心のサビではちゃんと盛り上げていますし、メロディーもキャッチー。前作より進歩した彼らの姿が垣間見える一曲です。#3.Timeless Sleepはアコギを活かした透明感と切なさが同居したミディアムナンバー。最後のサビでは転調し、ドラマティックな仕上がりになっています。

#4.Pray。これは管理人的にはこのアルバム内でのキラーチューンの一つです。夏の夜の神社、川にいるようなイメージを沸かせてくれるAZUKI七の巧みな風景描写と人の死生観や無常観を歌った儚い歌詞。中村の書く哀愁と神秘性が同居したメロディー。サビの最後の神秘的なコーラス。彼らの中でもかなりコアな楽曲ではありますが、これらが管理人のツボを突きまくります。

#6.Last love songは一転してノーマルなPOP系のアレンジが心地よい一曲。ただその若干湿ったメロディーと歌詞は彼らならではといった所。#8.wish★は彼らにとって新境地ともいえる電子音とダンスミュージック的なリズム感を取り入れたPOPなアップテンポ曲。途中で中村の加工されたテクノ系の声が聞けますし、実験的な曲ではありますがこれも管理人的に好みの曲です。

#10.Holy groundはこのアルバム最大のキラーチューンと呼べるタイトルのHolyから連想される聖なる儚さを持ったミドルテンポ曲。大事な人の死により絶望の淵に立ち前向きになるようでなれない人の無常観を歌った歌詞が素晴らしい。そしてサビの広がりのある儚いメロディーと聖歌の如きコーラスも非常に美しく文句なしの名曲です。

#11.Mysterious Eyes〜dry flavor of mix〜(bonus track)、#12.Timeless sleep〜Flow-ing surround mix〜 (bonus track)は既存曲のアレンジを変えた曲です。2曲ともやっぱり原曲の方が好きかな〜という感想に落ち着きました。

随所で強烈なキラーチューンが配されており、曲も全体的にキャッチーさが増して管理人的には文句の付け様がありませんね。彼らのアルバムの中では一番好きですし、これも墓の中まで持っていきたい名盤です。前作が気に入った方も是非聞いて頂ければと思います。

Crystallize〜君という光〜                    (2003)                                                                   

87点 

1.今日の君と明日を待つ

2.君という光

3.スパイラル

4.泣けない夜も 泣かない朝も

5.クリスタル・ゲージ

6.Marionette Fantasia

7.永久を駆け抜ける一瞬の僕ら

8.Endless Desire

9.逃れの町

10.Only Stay

11.恋することしか出来ないみたいに

12.夢みたあとで〜lightin' grooves True meaning of love mix〜

日本のネオアコをルーツとしたJ-POPバンドの3rdフルアルバム。

これまでよく言えば独自の個性、悪く言えば少々マニアックな路線を進んできた彼ら。音源のリリースはペースを緩めることはないものの、ライヴの本数はそれとは反比例してかなり少なくこのアルバムのリリースまではツアーも一回しかやっておらず、その他のライブもさほど積極的に開催、参加してはいませんでした。要はこれまでライブというものにそこまで重きを置いていなかったのです。彼らは元々プロのクリエーター集団ということもあってか、あまり聴衆というものを意識せず自分たちの表現したい音楽を最優先に取り組み完成させるという姿勢がこれまでの音源には良くも悪くも表れていました。

しかし、今回のアルバムはそういったある種職人気質な彼らの音楽に若干変化が見られます。まず明るい曲が多くなったこと。それだけではなく明らかにライブを意識したような曲が増えていることです。彼ら自身もこの前年に初めてのツアーを行ったことが楽曲制作の姿勢に大きく反映されたと語っている通りで、ライブに来てくれるようなファンの事も意識してか少し独自路線から歩み寄りを見せたような雰囲気があります。

#1.今日の君と明日を待つは穏やかな雰囲気のミディアムテンポ曲。透き通った切ないメロディーとコーラスがいい感じですし、彼ら特有のマニアックな毒気がないあたり今作のアルバムをのっけから象徴するような曲ですね。高品質で綺麗なPOPという感じです。#2.君という光はこれまた透明感のある穏やかなバラードです。これもコーラスがいい味を出していますし、特に間奏のコーラスは透き通った美しさがあって管理人も大好きな曲です。歌詞も間奏の愛とは何か?という問いについて語ったような部分が鋭い表現をしていて思わず頷いてしまいますね。

#3.スパイラルは最初はミディアムテンポで始まりますが、途中からアップテンポなPOPナンバーに様変わりします。サビも跳ねるような爽やかさがあり、ライブでも盛り上がりそうな曲になっていますね。#4.泣けない夜も 泣かない朝もはいきなりメロディーの上に加工した男性声のラップ調英語が聞こえる出だしに面喰らいますが、曲自体は彼ららしい哀愁ミディアムナンバーです。このアルバムでは数少ない哀愁系の曲ですし、最後のサビで転調する部分が管理人的にツボです。

#6.Marionette Fantasiaは今作でも管理人が一番気に入っている曲で、幻想的でおとぎ話の世界にいるようなミディアムテンポ曲。間奏のこ洒落たシンセの音もいい感じで、歌詞もアレンジもまるで深い森の古びた洋館に迷い込んだようなイマジネーションを掻き立てられる曲に仕上がっていますね。その光景をピンポイントで想像させるような独特の奥行のある職人芸的な世界観の演出は彼らならではといった所。

#7.永久を駆け抜ける一瞬の僕らはコーラスと透明感のあるピアノの音を活かしたミディアムテンポ曲。これはサビメロが管理人的に大好きな曲で、淡々とした穏やかな展開からサビでは一転して少し哀愁を持った雰囲気を醸し出し最後に切ないメロディーを歌い上げる中村のボーカルが素晴らしいですね。歌詞も久々に故郷に戻ってきた際に感じる儚さを哲学的に描いています。

#8.Endless Deireは彼らの曲にはいままでなかったようなタイプの都会的な雰囲気を漂わせるロックテイストのアップテンポチューン。サビを始めとしたシリアスな雰囲気が中々カッコよく、今までにはないタイプの曲とは言え効果的なコーラスなど彼らならではのアレンジ等はちゃんと「らしさ」が出ていますね。#11.恋することしか出来ないみたいには合間合間に歓声の入るアップテンポのPOPチューン。これもライブを意識したような今までにはないタイプの曲ですが、メロディーなんかを聞くとGARNET CROWの曲として聞こえてしまうのが何とも不思議ですね。最後にも歓声と中村の「センキュー!」の声が入っています(笑)

#12.夢みたあとで 〜lightin' grooves True meaning of love mix〜は前作に収録されていた「夢みたあとで」のアレンジを変えている曲で、最初は壮大なオーケストラの出だしから始まるも歌が始まるとユーロビートっぽいリズムとアレンジになります。これも原曲の方がやっぱりいいかな〜と。

今までとはかなり大きな路線変更をしたアルバムになっていますね。曲の雰囲気も穏やかな透明感を全面に押し出していますし、彼らにとっては新境地と言える曲にも何曲か取り組んでいます。管理人的にはマンネリ化を防ぐ上ではいい変化の仕方だと思いますし(哀愁曲やダークな曲があんまりないのは少々残念ですが・・・)、彼らが我々聴衆を意識し出したという点でも彼らの転機と言える作品かもしれません。

I'm Waiting 4 You (2004)                                           

94点                                         

1.夕月夜

2.冷たい影

3.忘れ咲き

4.君を飾る花を咲かそう

5.U

6.fill A Way

7.僕らだけの未来

8.この冬の白さに

9.ブルーの森で

10.雨上がりのBlue

11.Picture Of World

12.Sky〜New Arranged Track〜

13.君 連れ去る時の訪れを


日本のネオアコをルーツとしたJ-POPバンドの4thフルアルバム。

前作のアルバムは聞きやすさや普遍性を重視しており、孤高の存在からやや丸くなった感のある彼らですが今作はその良さは残した曲はありつつも初期のダークさが見事にカムバックを果たしており、彼らのダークで暗い一面が大好きな管理人には大満足な一枚になっています。逆に言うとそこまではっちゃけた曲がないためか彼らのアルバムでもトップクラスに暗い部類になっているのでと感じます。

#1.夕月夜はいきなりノスタルジーで儚いメロディーを演奏するキーボードとアコギから始まる曲で、前作の澄んだ透明感と初期のダークな哀愁が見事に絡み合った曲になっていますね。特に曲のアレンジが澄んでいながらも少し陰りのある世界観を見事に表しています。

#2.冷たい影は鬱蒼とした哀愁ミディアムバラードで管理人の大好きなタイプの曲です(笑)少し歌謡曲的な哀愁があるもののアレンジ力のすさまじさ故か全く古臭さ等も感じさせず、彼らのダークな一面を上手く表現している曲ですね。もうメロディーが全てツボなんですが、この曲は無常観溢れる歌詞も非常に好きですね。「どんな幸福にも哀しみが混ざる」という部分がまさしくその通りだなと管理人的は共感してしまいます。

#3.忘れ咲きは今までの2曲とは一転して穏やかで優しい雰囲気を持ったミディアムナンバー。これはどちらかというと前回のアルバム系統の曲ですね。サビメロの優しくも力強さを感じさせるメロディーと透明感のあるキーボードを活かしたアレンジがいいですね。#5.Uは少し洒落た雰囲気を持った独特のテンポのミディアムテンポ曲。途中で途端に演奏に厚みが増したり、ラストのサビでは転調したりと結構ドラマティックで劇的な曲になっていますね。

#6.fill A Wayはバンドサウンドのアンサンブルを活かしたアップテンポナンバー。サビメロもキャッチーで突き抜けるような感じがありますし、ここまで結構濃いミディアムテンポやバラード系の曲が多かったため、曲の流れとしては丁度いいですね。#7.僕らだけの未来はラテン風のギターやリズムを活かした情熱的な哀愁アップテンポナンバー。このアルバムでは多分一番テンポが速く、結構短くあっさり終わるためライブ向けの曲と言えるでしょう。キャッチーで若干哀愁を持ったメロディーがこれまた管理人的には結構好みです。

#8.この冬の白さには冬らしい美しさや寒々しさを持った哀愁ミディアムナンバーでこれは管理人がGARNET CROWの曲の中でも特に気に入っている曲です。ピアノとギターの伴奏で儚く歌い上げるボーカルからサビの劇的な哀愁メロディーへ。加えてこのサビはコーラスが凄く効果的に使われていてもうヤバいです(笑)最後の儚いボーカルと非常に美しいコーラスパートが絡み合い終わるのも圧巻で本当にこの曲は管理人の好みを的確に突いてきますね・・・

#10.雨上がりのBlueは爽やかで透明感のあるアップテンポなPOPナンバー。いかにも夏をイメージさせる曲で、キラキラしたキーボードと爽やかなメロディー、ラストのサビでの転調とこれまた管理人的に大好きなパターンの曲ですね。#11.Picture Of Worldはクラシカルで叙情的なキーボードから幕を開ける曲で、特別暗くはないんですが不思議な哀愁を感じさせる曲ですね。歌詞も結構意味深な感じで人の無常観を部屋のポスターの視点から見ている部分もあったりと斬新な物になっていますね。

#12.Sky〜New Arranged Track〜は彼らがインディーズ時代にリリースした曲の「Sky」を再録及びリアレンジした曲。この曲自体が鬱々とした浮遊感のある暗さがあり、管理人もかなり好きな曲なんですがこれも毎度のごとく原曲の方が好きかなという感じです。中村のボーカル等はこの再録の方がハッキリと成長しているのがわかるんですが、アレンジがやはり原曲の方が自然でこの曲には合っているような感じです。

哀愁ナンバーやダークな曲が少なかった前作と比べるとかなりそういった曲が増加しているため、初期からのファンには嬉しいところではないでしょうかね。一層深みを増しつつあった楽曲に初期のダークさが加わったことにより、自分たちの本来持っていた個性をフルに表現しつつクオリティもさらにレベルアップした印象です。

これも管理人がGARNET CROWでは特に好きなアルバムの一つです。

THE TWILIGHT VALLEY           (2006)                                            

90点                                         

1.Anywhere

2.まぼろし〜Album arr.〜

3.今宵エデンの片隅で

4.Rusty Rail

5.夢・花火

6.かくれんぼ

7.向日葵の色

8.晴れ時計

9.マージナルマン

10.籟・来・也

11.Yellow Moon

12.もうちょっとサガシテみましょう

13.春待つ花のように

14.WEEKEND


日本のネオアコをルーツとしたJ-POPバンドの5thフルアルバム。

毎度一定のペースを保ちながら高品質で深みのあるJ-POPを提供してくれるGARNET CROWですが、今作はタイトルの和訳「黄昏の谷」とオレンジ色のジャケットが示す通り、夕暮れ時をテーマに作られています。そんな訳で今回のアルバムは一つのコンセプトが決まっているせいか、非常に統一感のある作風になっており、黄昏に聞きたくなるような程よい哀愁曲連発の作品になっていますね。

#1.Anywhereはノスタルジーで浮遊感のあるキーボードと中村の歌唱からミディアムテンポの曲で、幻想的な出だしと感傷的なメロディーを中村が声を張り上げて歌うサビが、このアルバムの世界である穏やかな暖かさと無常な冷たさの同居した黄昏時に早速引き込んでくれます。彼らが自分たちの音楽性を端的に表している一曲としてこの曲を挙げていますが、それも頷ける一曲です。

#2.まぼろし〜Album arr.〜はシングルとしてリリースされた「まぼろし」のアルバムアレンジバージョン。これもまた黄昏時に相応しい哀愁を感じさせる曲で、一番のサビ後の中村の伸びやかなコーラスはGARNET CROWの曲の中でも特に美しい部分だと管理人は思います。シングルはアコギを全体的にフューチャーしているのに対して、こちらのバージョンはキーボードを押し出したアレンジになっていますね。#4.Rusty Railはアコースティックな質感のギターから始まる穏やかなミディアムテンポ曲。サビのメロディーが何だか故郷を思い返す時に感じるようないわゆるノスタルジアを感じさせます。歌のタイトルは列車のレールの事なんですが、それが遠くへ旅立ってしまった愛する人をつなぐ唯一の道であるという事が歌詞を読むとわかりますね。駅もなくなり錆びたレールだけになってしまったその場所でずっとその人に想いを馳せて待っているという切ない物語が描かれています。

#5.夢・花火はラテン風の情熱を持った哀愁アップテンポナンバー。前のアルバムでいう「僕らだけの未来」と一緒のタイプの曲と言えますが、こちらの方がサビまでの盛り上がりの劇的さが増していますし、ラストはピアノと中村のボーカルのみでしっとりと終わります。

#6.かくれんぼは管理人がこのアルバムで特に気に入っているダークなミディアムナンバー。出だしのダークでミステリアスなキーボードとサビのコーラスを活かした哀愁メロディー、間奏での壮大で広がるような世界観等楽曲もツボなんですが、この曲は歌詞がともかく大好きなんですよ。この曲の主人公は神社でかくれんぼした際にオニになってみんな隠れたら、そのまま悠々と探すふりをしつつ丁寧に神社の境内に鍵をかけて家に帰っちゃうんですね(笑)で、子どもって純粋だから見つからなかったら願いが叶うとふざけ半分でいったのに律儀にずっと隠れてるもんだから、それをほくそ笑みながら一人の時を楽しんでいる訳です。こういうホラーチックな歌詞いいですね〜、しかもこれ管理人も子供のころにここまで過激ではないにしろ同じようなことをしていた記憶があります(笑)

#7.向日葵の色は叙情的なストリングスが所々に入るミディアムナンバー。これは歌詞を見ると向日葵の絵に筆という歌詞が出てきていますし、画家のゴッホを描いた歌詞ですね。ゴッホの破滅的な人生とどこか不器用な性格が招いた悲しみを歌っているように思えます。ゴッホの代表作が皆さんご存知の向日葵な訳ですが、その絵からAZUKI七が感じたゴッホに対する印象や生き様を描いた曲と解釈もできそうですね。この意味深な歌詞とコーラスの不思議な綺麗さ、終末を感じさせる退廃的な世界観も相まってこの曲もこのアルバムでは大好きな一曲です。

#8.晴れ時計は明るい夕暮れをイメージさせるアップテンポなポップナンバー。アコギを活かしたソフトでアットホームな楽曲になっていますが、サビは弾けたような明るさと爽やかさがありますね。ある種無難といえば無難な曲ですが、こういう曲も管理人は普通に好きです。#10.籟・来・也はケーナなる民族楽器を取り入れたという哀愁チューン。この出だしのオカリナっぽい音がそうなのかもしれません。春、夏、秋、冬の四季から見える人の生き方と人生の儚さを歌った曲でいささか歌詞の言い回しなんがが固く、哲学的な感じですね。

#11.Yellow Moonは渋い哀愁ギターから幕をあける曲で、中村のボーカルのメロディーもわかりやすい歌謡曲的な哀愁が漂っています。全体的に岡本のギターの渋みを活かしたこれも夕暮れ時らしい曲ですね。#14.WEEKENDは哀愁のピアノ、ギター、コーラスから始まるミディアムナンバー。この哀愁メロディーはまさに今回のアルバムのカラーである夕暮れ時なわけですが、サビメロは優しい穏やかさがあり、タイトル通り一週間の終わりにホッと一息つきたい時に聞きたくなるような一曲です。

明るい曲もそうでない曲も全編通して今回のアルバムのカラーである夕暮れ時のオレンジ色を連想させる、コンセプトアルバムとしても見事なまとまりがありますね。歌詞もわりとディープで濃い内容のものがいつも以上に多い印象がありますし、彼らの個性はより鋭さを増すばかりといったところでしょうか。

哀愁曲が多めという事で管理人的にも満足な一枚です。

LOCKS        (2008)                                            

80点                                         

1.最後の離島

2.涙のイエスタデー(album ver)

3.世界はまわると言うけれど

4.もう一度 笑って

5.この手を伸ばせば(album ver)

6.doubt

7.風とRAINBOW

8.ふたり

9.Mr.Holiday

10.The first cry

11.Love is a Bird


日本のネオアコをルーツとしたJ-POPバンドの6thフルアルバム。

これまでリリースされているGARNET CROWのアルバムの中でも、特に従来のファンからは賛否両論が巻き起こったアルバムがこのLOCKSです。GARNET CROWというとやはりその無常観や冷たさ、哀愁を描いたほの暗い曲が彼らの大きなアイデンティティーを占めていると思っているファン(管理人含め)も結構いらっしゃる訳ですが、このアルバムの楽曲群は意図的にそういった部分を最小限に封印したかのように、はつらつとした生命力や優しさ、躍動感に満ち溢れた作風になっています。この作風の大きな変化は今回のアルバムのテーマとして彼らが掲げた「ピュア」、「エバーグリーン」という二つの言葉からも伺えるかと思います。

#1.最後の離島は穏やかなメロディーのギターからストリングスを交えて雄大で壮大なメロディーのサビを歌い上げるミディアムテンポの曲。彼らの曲でここまでスケール感を感じさせるポジティブかつ壮大な曲は今までになかったため、このアルバムの世界観が今までの彼らのアルバムとは違うことが容易に感じられます。大空を舞うような開放感とクリアさがあり、管理人はとても好きな曲です。

#2.涙のイエスタデー(album ver)シングルとしてリリースされた少しジャジーなピアノが入るもサビから始まるハツラツとした明るいPOPナンバー。album verということで出だしからサビに入る構成に変更されています。こちらも開放感のあるキャッチーなサビを、中村が声を張り上げる様に力強く歌う部分が印象的です。#3.世界はまわると言うけれどは穏やかな透明感と無常観のある歌詞が光るバラード。曲調はさして暗い訳ではないんですが、歌詞がこれはAZUKI七らしいセンスが感じられて管理人は好きです。世界を傍観者として見るだけであれば、どれだけ楽なのか・・・と思いつつも、この世界では主体的に生きていかなければいけないとわかっている事。そして、人の世に対するあきらめに近い悟りを開いたような描写。この2つの間での葛藤を上手く表現した歌詞だと思います。サビで一気に爆発し、ラストは転調してよりドラマティックになる構成もグッドですね。

#5.この手を伸ばせば(album ver)もシングル曲で、穏やかなストリングスにコーラス、サビの優しい爆発力が特徴のミディアムナンバー。アコギからはじまりますが、すぐにバンドサウンドと中村の透明感のある綺麗なコーラスが入り、ピアノとストリングスをバックに力強く歌う中村のボーカルが聞けます。そして、劇的に盛り上がるサビメロがまたいい感じです。GARNET CROWの特権と言えるコーラスがこういう雄大で力強い曲調にも見事にマッチしており、ラストは転調とこれも管理人のツボを突いた展開です(笑)シングルver.と聞き比べると、このコーラスがより厚くなっているアレンジになっていますね。

#7.風とRAINBOWはシングル曲であるラテンテイストの哀愁ナンバー。彼らはこういうラテン系のアレンジが好きなのか、過去の3作では大抵一曲は入っていますね。ベタな哀愁メロディーのサビは昭和後半〜平成初期のJ-POPや歌謡曲のような古臭さを感じさせます。#8.ふたりは軽快なギターが聞ける明るいPOPナンバー。バンドサウンドのグルーブ感を押し出したような曲になっていますし、加工した呟くようなボーカルと普通のボーカルの掛け合いからの明るくはっちゃけたようなサビとこれも”らしくない”曲と言えますね。ラストはサビメロが転調します。

#9.Mr.Holidayはリズム感を大切にしたご機嫌なPOPナンバー。サビメロの「1、2、3」や「ホップ、ステップ、ジャンプ」と言った歌詞のゴロの良さが適度に楽しげなリズム感を加えていて、管理人はこういうPOP曲凄く好きですね。途中は何故かストリングスのみでしっとり歌うパートもあったりと意外性のある展開もいい感じです。#11.Love is a Birdはアルバムの締めとなる穏やかなミディアムナンバー。サビの優しくもノスタルジーで雄大なメロディーとラストのサビでの転調は、まさにこのアルバムの締めにピッタリと言える曲になっていますね。

今までとはかなり違う路線は、従来のファンからは厳しい意見も多いことが伺える内容になっていますね。3rdアルバムでも少し明るめの曲に路線を変更しているものの、あちらは透明感や儚さがあって彼ららしさというのがまだ感じられていました。このアルバムも部分部分を見れば、彼ららしさというものが感じられるものの、何より普段より元気過ぎる事に加えて、暗い哀愁ナンバーがほぼ皆無というのは管理人的にはかなり残念です。しかし、壮大で活力あふれる楽曲は彼らの新しい魅力を感じさせてくれたため、管理人的な総評として、アルバムとしてはギリギリ及第点と言える内容でしょう。

実をいうと彼らの作品ではなかったら、もう少し高評価だったかもしれませんが、管理人が彼らに求めているのはこの路線ではないため、そこが悩ましい所ではありますが・・・

STAY           〜夜明けのSoul〜               (2009)                                                             

                        

96点                                         

1.Hello Sadness

2.百年の孤独

3.花は咲いて ただ揺れて(album ver)

4.Elysium

5.Doing all right

6.ON THE WAY

7.Stay

8.日々のほとり

9.夢ひとつ

10.Fall in Life〜Hallelujah〜

11.Rainy Soul

12.恋のあいまに


日本のネオアコをルーツとしたJ-POPバンドの7thフルアルバム。

前作であるLOCKSはこれまでとは大幅な作風のチェンジにより、ファンの間でも賛否両論を巻き起こしましたが、そうこうしているうちに翌年の2009年にはこのGARNET CROWも活動開始から10年が経過しようとしていました。2009年は10周年目前という事でメンバーたちは良くも悪くもその重さを意識した年だったということで、今回作成されたこのSTAY〜夜明けのSoul〜もかなり気合を入れて作られた模様です。音源のリリースペースも一切緩める事はなく、さらにはこのアルバムを引っさげたツアーはもちろん、年末年始にはカウントダウンライブも開催。例年以上に積極的な活動を展開した年となりました。

さて、今回のアルバムはメンバーも一区切りの時期ということで彼らの原点を意識して作られたらしく、前作では皆無だったダークな哀愁要素が気持ちいい位に完全復活を遂げていますね。アルバムリリース前のシングル曲に彼らお得意の哀愁ナンバーがあったため、リリース前から期待が高まっていた訳なんですが、初めて聞いたときは管理人もこれを待っていた!!とガッツポーズものでした(笑)さらに、これまで実験的に培ってきた物もマテリアルとして上手く利用しており、まさに彼らのこれまで歩んできた道のりの集大成ともいえる力作となっています。

#1.Hello Sadnessは電子音的シンセと荘厳なキーボードが絶妙の絡みを見せ期待感を煽り、力強いリズムで始まるミディアムチューン。歌が入ると穏やかになりますが、サビは情熱的な哀愁を感じさせるメロディーと中村の力強い歌い方で一気に引き込まれますね。まさしくオープニングナンバーにぴったりと言える一曲です。#2.百年の孤独はシングルとしてリリースされた仄暗い哀愁バラード。鬱々としたキーボードが退廃的な世界観を放っており、歌が入っても侘しい退廃感が常に漂っています。しかし、サビではコーラスとともに一気に盛り上がり、暗く儚いメロディーを聞かせてくれます。無常観に溢れまくった歌詞とこの鬱々とした曲調によってか、彼らの曲でも特に救いようのない何かを感じてしまいますね。

#3.花は咲いて ただ揺れて(album ver.)もシングルとしてリリースされた彼ららしい哀愁ミディアムチューン。こちらものっけから物悲しい哀愁を放ちまくっていますが、特にサビでの中村が声を張って歌う哀愁メロディーの破壊力は凄まじい物がありますね。歌詞も哲学的な言い回しでAZUKI七らしい無常観を花で例えて描いています。album verということですが、シングルとはちょっと間奏が違うかな〜程度でアレンジ的には目立った違いはありませんね。特に奇をてらっている訳でもなく純粋に彼ららしいと言える楽曲でして、LOCKSでちょっとガッカリ気味だった管理人が今回のアルバムに期待するきっかけとなった曲です(笑)#4.Elysiumも幻想的な儚さを感じさせるミディアムチューン。出だしこそ淡々としていますがサビでは伸びやかながらどこか憂いを感じさせる哀愁メロディアスなメロディーが聞けて、これも管理人にはクリーンヒットしましたね〜。歌詞も愛する人を失ったがゆえに溢れ出る無常観に満ち溢れており、ラストのフレーズである「永遠なる愛なんて信じてない それでも心は何か欲しがる 何も持たないでいれたなら 少しは楽なのに」という部分は無常観の中にある葛藤や寂しさを鋭い感性で描いていると思います。

#5.Doing all rightは穏やかで綺麗なピアノの音から始まるPOPチューン。Doing all rightというコーラスと手拍子が頻繁にでてくるため、彼らの曲でも特にライブでの臨場感を意識した作られた曲だと思われます。手拍子は会場全体でリズムを取り、コーラスはファンとメンバーで大合唱する様子が容易に浮かんできます(笑)サビはこの手拍子とコーラスをバックにキャッチーなメロディーを聞かせてくれます。#6.ON THE WAYは洒落たピアノから始まるPOPチューン。この曲は90年代のビーイングらしい匂いが楽曲から溢れており、管理人も最初聞いたときは何処となく懐かしい気持ちになりましたね(笑)特にサビメロはPOPでキャッチーだけれど、仄かなノスタルジーを感じさせるビーイングのお家芸と言えるメロディーのため、当時のビーイング系アーティストが好きだった方は多分管理人と同じ気持ちになるんでないかと思います。

#7.STAYは今回のアルバムのタイトルを冠した起伏の激しいミディアムチューン。穏やかなピアノとストリングスから入るメロディーは少しブルース風の渋みがあり、中村のボーカルや歌い回しも普段より伸び伸びと気ままに歌っている印象があります。この曲自体が中村も普段の楽曲制作とは違い、勢いとアドリブで作ったものをほとんどそのままにAZUKI七に歌詞をつけてもらい、古井にアレンジしてもらったそうで、緻密で計算高い楽曲が多い彼らの曲にしては確かに奔放な作風で異質なものを感じます。故にこれは最初に聞いたときは結構新鮮に感じましたね。サビは声を張り上げる様にソウルフルな歌唱を見せる中村の歌唱といい、副題の〜夜明けのSoul〜にピッタリの曲と言えるでしょう。#8.日々のほとりは癒し系の穏やかさを感じさせる綺麗なメディアムチューン。わりと前作のLOCKSに通じるクリーンさがありますが、普段の彼ららしい大人しさがあるためよりナチュラルに聞くことができますね。前作の作風がいい具合に消化されています。ともかく全編この穏やかで透明感のあるメロディーが美しいため、管理人も癒されたい時によく聞く一曲です(苦笑)

#10.Fall in Life〜Hallelujah〜は明るく弾けるような輝きを持ったPOPロックチューン。サビの弾けた様な瑞々しくもPOPで突き抜けるサビが管理人的にかなりツボなんですが、明るい曲調に合わせて歌詞もGARNET CROWなりの捻くれた応援歌とも言えなくもないですね。「"変わりたい"とか "変われない"とか 実りのない話 また繰り返してるうちに 息を潜めてしまってたみたい 本気の感動 好奇心」とそんなつまらない事にとらわれてちゃ損だよ!!と言わんばかりの皮肉の利いた前向きなメッセージがいいですね(笑)#11.Rainy soulは仄暗いピアノから始まるダークなミディアムチューン。彼ららしい鬱々とした暗さが満ち溢れたメロディーが独特の空気を放っていますね。サビはノスタルジーで切なくも綺麗なメロディーを聞かせてくれますが、やはり雰囲気がシリアスで重いです(笑)

彼らの新しい局面を感じさせる曲や部分を見せつつも、今までの活動で学んできた部分を自分たちの持ち味を最大限に引き出して見事に昇華した名盤ですね、これは。ダークな曲が目白押しなのはもとより、そうでない曲も今まで以上にバラエティに富んでいて飽きさせないのが、今回のアルバムでの最大のポイントではないでしょうか。

正直あれだけ賛否の別れたLOCKSの後にこんな作品をドロップしてくるのは管理人も予想外でした(苦笑)管理人的には彼らのアルバムでも2ndフルアルバムの「SPARKLE〜筋書き通りのスカイブルー〜」と双璧を成すほどに完成度の高いアルバムだと思いますね。これも管理人の墓の中まで持っていきたい名盤です。

parallel universe             (2010)                                            

                               

87点                                         

1.アオゾラカナタ

2.As the Dew〜album version〜

3.Over Drive

4.ell me something

5.迷いの森

6.空に花火〜orchestra session〜

7.渚とシークレットデイズ

8.The crack-up

9.strangers

10.今日と明日と


日本のネオアコをルーツとしたJ-POPバンドの8thフルアルバム。

前作では自らの原点と現在をうまく混ぜ合わせ、管理人的には最高の作品を届けてくれたGARNET CROWですが、2010年は全開でも触れた活動10周年記念ということで引き続き積極的に活動を展開。まず、映画「名探偵コナン 天空の難破船」の主題歌に起用された10周年を迎えての第一弾シングル「Over Drive」が自身の最高位であるオリコンチャート4位を記録。これまで数々の作品をリリースしている彼らですし、コナンの主題歌ももうこれで何曲目だろうというぐらいですが(笑)、管理人も改めて彼らの活動歴を振り返ってみるとこの最高位はかなり意外な印象を受けました。超メジャー級とまではいかずとも決して売れていないわけでもないアーティストですし、特に活動休止することもなくコンスタントな活動を見せていますからもう既に3位以内を取っていた気が勝手にしていたというか・・・(苦笑)

さらにはこれまでの楽曲の中から「大切な人に贈りたい曲 大切な人に聞いてもらいたい曲」というテーマに沿って選曲された初のコンセプトアルバム「All Lovers」、自身では2枚目のベストアルバムでこれまでのシングル曲+新曲As the Dew(初回限定盤はさらにシングルのカップリングベストも同封)を収録した「THE BEST HISTORY of GARNET CROW at the crest...」をリリース。そして、夏には初のオーケストラと共演したライブ、年末には昨年に引き続きカウントダウンライブを開催と新しい試みにも盛んにチャレンジしています。

そして、そんな年の中届けられた今作ですが、今回はメンバーいわく過去から温めていたマテリアルを一切使わず、2010年中にすべて一から作った曲を収録したと語っており、過去との調和という印象だった前作から打って変わって現在のGARNET CROWの姿を色濃く投影した作品に仕上がっていますね。アルバムのジャケットから想像がつくように全体的に開放感や清々しさといった「新しい風」を意識させるような曲が多いのですが、所々でやはりGARNET CROWらしいと思ってしまう所もちゃんと存在しています。

#1.アオゾラカナタはキラキラとしたキーボードとチェロ、ストリングスの音から始まるクリアで清々しさ溢れるPOPチューン。最初はこれらの音でしっとりとサビを歌い上げますが、途中からはドラムの音やギターを中心にごく普通のPOPらしくテンポのいいリズム感に。サビのこのクリアで開放感あふれたメロディーと中村の裏声がまたすごく綺麗で、新鮮ながら素直にいいと思えるこのアルバムらしい曲ですね。#2.As the Dew〜album version〜は今の彼らの集大成とも言える個性が詰まったアップテンポなキラーチューン。サビの適度な哀愁を感じさせるキャッチーなメロディーが管理人的にまず凄まじくツボなんですが、ジャズを意識させる軽やかなキーボードが非常に都会的でスタイリッシュな印象を与えます。GARNET CROWに限らずこういう哀愁メロディーの曲ってやっぱりどうしても雰囲気が重くなりがちなことが多いんですが、これはそういった印象を全く与えず、「軽やかな哀愁」という新鮮な刺激に満ち溢れていますね。今回はalbum versionということでサビから始まるアレンジに変更されています。

#3.Over Driveは前述のシングル曲で、ホーリーで真っ白な雰囲気とPOPさが合わさった一曲。最初は重厚なシンセとストリングスでひたすらにしっとりした質感を出しますが、途中からはアオゾラカナタと一緒でリズム感を重視したPOPチューンへ。サビもキャッチーで覚えやすいですし、厚いストリングスやコーラスも楽曲が重くなりすぎることなく効果的に使われています。しかし、この曲。某有名なクリスマスソングにそっくりなメロディーが出てくるのが人によっては気になるかもしれません(苦笑)#4.ell me somethingは引き続き軽やかさと爽やかさが印象的なPOPチューン。これまでの3曲と比べると特に目新しい捻りがない分、どうしても普通に聞こえてしまいますが、ピアノアレンジがいい具合に瑞々しさを与えていますし、サビも跳ねる様にキャッチーとこちらもいい感じです。

#5.迷いの森はこれまでの爽やかな流れから一転して、GARNET CROWらしい仄暗さが発揮されたダークなミディアムチューン。アコギと打ち込み、包み込むようなシンセとギターソロから始まり、雰囲気やメロディーもタイトルを想像させるようにかなり暗く妖しい感じです(笑)しかし、サビは意外とキャッチーで聞きやすいですし、ギターソロもいい具合に哀愁を放っています。さらには、浮遊感に溢れたコーラスパートやラストはサビの転調とならではの個性溢れた一曲ですね〜。歌詞もかなりダークというか、不思議な森に迷い込んでしまい抜け出せなくなってしまったような気持ちを歌った歌詞のようで「行きはよい 帰りはない」というフレーズがかなり印象的です。歌詞から見るに実際に迷い込んだという話ではなく、それを比喩の用に使ってやり場のない気持ちや心を表現しているというのもAZUKI七らしいセンスが光ります。#6.空に花火〜Orchestra version〜は前述のコンセプトアルバム「All Lovers」に唯一の新曲として収録されていたバラード曲。ノスタルジーな壮大さを前面に押し出したいわゆる感動系のメロディーやアレンジがこれも今までの彼らにはない感じで新鮮ですね。特にサビメロはそれに加えて力強さも感じさせますし、今作の中でも一番現在受け入れられやすいJ-POP的な要素を感じさせます。管理人的には特にギターソロがシンプルながら哀愁があるのが好印象です。今作ではOrchestra versionということでよりストリングスがかなり厚く使用されており、原曲以上に壮大さが増している様に思いますね。

#8.The crack-upは今作の中でも特にマニアックと思われるミディアムチューン。最初は普通のPOPチューンかなと思わせるほど平和的で穏やかな出だしですが、歌の直前で突如調が変わり「光は既に失った〜」という歌詞と共に仄暗さを強調したダークで儚いメロディーを淡々と歌い上げるという落差がとても激しい曲になっています(苦笑)サビは声を張り上げる様にノスタルジーなメロディーを歌い上げますが、そのメロディーはまた特段絶望的な暗さを感じさせないのが返ってまた不気味です。これまでのGARNET CROWの楽曲の中でもかなりプログレチックというか前衛的な曲ではないでしょうかね。#9.strangersはエモーショナルで明るい哀愁を感じさせるギターソロから始まるPOPチューン。これも今作らしい爽やかさを持った曲ですが、ギターソロでも触れた明るい哀愁というかノスタルジーが漂っていて歌詞も夕暮れを連想させることから、夕方にしんみりと聞きたくなる曲になっていますね。

全体的には爽やかという印象がピッタリなアルバムですが、その中にもやはりGARNET CROWらしいえげつなさ(苦笑)やらしさは健在で、アレンジなどもどこにこんな引出があったんだというぐらいにこれまでになかったもの次々と見せてくれていて彼らのクリエイティブさには改めて感服させられました。今までの作品に比べると刷新とまではいかないものの新しい試みがそこかしこに散りばめられているせいか、一番挑戦心が感じられて、こう見ると”らしさ”がなくなってしまうように思いがちにはなりますが、そこのバランス感覚はさすがといったところでしょうか。

結成10年目にしてこれからの進化がさらに期待できる、そんな一枚だと管理人は思います。

メモリーズ             (2011)                                            

                               

85点                                         

1.Smily natiom

2.live〜When You Are Near!〜

3.JUDY

4.Misty Mystery

5.一緒に暮らそう

6.メモリーズ

7.静寂のconcerto

8.創世記T

9.ロンリーナイト

10.英雄

11.Blue Regret

日本のネオアコをルーツとしたJ-POPバンドの9thフルアルバム。

前作となるアルバムをリリースした年は丁度活動10集年ということでライブ、音源リリース含め普段以上に積極的な活動となったGARNET CROWですが、翌年となる2011年はシングルこそ2枚リリースがあったものの震災の影響もあったようでそれ以外は特に表立った活動は少なく、前作からほぼ1年後に今作のメモリーズがリリースされました。相変わらず作品のリリースペースはコンスタントですね。

今作はメンバーいわく従来のGARNET CROWのイメージにとらわれることなく貪欲にいろんなタイプの曲を作ったと語っていますが、作風的には前作のparallel universeを順当に進化させたような印象を管理人は受けました。前作からの傾向として初期に比べると素朴さが薄まったようで非常に垢抜けたというかメジャーらしい洗練さも板についてきたという感じですが、お得意の哀愁ダークな曲はもちろん今作も曲のバラエティが豊かでこの路線も円熟味を帯びてきたといった所でしょうか。

#1.Smiley Nationはシングル曲でキーボードとアコギの音、はつらつとした明るさが元気印という印象を与えるPOPナンバー。サビのはつらつとしたPOPで跳ねるようなメロディーが管理人的にかわいらしくていいと思いますね。こういう曲が違和感なく似合うようになってきたというのも彼らが徐々に試行錯誤して変化してきた結果を伺わせます。#2.live〜When You Are Near!〜は前曲の流れをそのままにライブ感を意識した明るいPOPナンバー。楽器隊の音とリズム感を強調しており、サビもコーラスを活かした親しみやすいメロディーとシンプルながら素直に楽しいと思わせてくれる曲ですね。

#3.JUDYはPVも作成されているGARNET CROWの王道にして神髄と言える哀愁バラード。ノスタルジーを携えたキーボードとストリングスから渋いギターソロが入り、中村の淡々とした歌唱から、サビでは必殺といえる物悲しい哀愁メロディーと管理人もこれは一聴しただけでノックアウトでした(苦笑)ラストのサビはお約束の転調と安定路線ながら管理人のようなファンの期待にキッチリ応えている楽曲です。#4.Misty Misteryはシングル曲でディスコ風のダンスサウンドなシンセが都会的な雰囲気を感じさせるダークでリズミカルな一曲。ギラついた都会的な空気とGARNET CROWらしいダークさがミステリアスな中にもキラリと光るカッコよさを演出していて新鮮さ溢れるスタイリッシュな曲になっていますね。

#5.一緒に暮らそうは何処となく90年代のJ-POPな香りが漂う哀愁ナンバー。渋いフレーズが多いギターやジャズ風のキーボード、懐かしさ漂うサビメロと今の時代の曲らしからぬ古臭さがありますが(苦笑)、逆に今の時代に聞くと新鮮味があります。歌詞は振り向いてもらえない恋をしている人間のある種脳内妄想とも言える世界と独占欲を描いていますが、地味にリアリティがあって怖いです(笑)#6.メモリーズは今作の表題曲となっているPOP曲。派手さや突出した個性こそない物の流れる様な抑揚のあるサビメロと自然な優しさを感じさせる曲でして、表題曲としてはインパクトが薄めですが何度も聞きたくなりますね。

#7.静寂のconcertoはピアノとしなやかな弦楽器から始まるミディアムテンポ曲。ピアノを中心に上品でしっとりとした穏やかさを見せますが、サビメロ前で徐々に調が変わり、サビではGARNET CROWらしいお得意の哀愁メロディーというちょっと意外な展開を見せますが、これも哀愁好きな管理人としては文句なしに好みです(笑)間奏のピアノの旋律もクラシック音楽的上品さがあってまた秀逸です。#9.ロンリーナイトは再びディスコ風のギラついたシンセが登場するアップテンポナンバー。中村の声がテクノ風に加工され、ギターソロもいやにピロピロしていたりと新機軸を大胆に取り入れていますね。サビもキャッチーで最後のロンリーナイト!というフレーズがテンポよくつい一緒に口ずさんでしまいます。

#10.英雄はGARNET CROWらしいしっとりとした渋みのあるバラード。今回は中村のボーカルのバックでギターの岡本のコーラスが全編にわたって取り入れらており、実質ツインボーカル体制というべき曲になっていますね。これもまた新しい試みを感じさせます。歌詞は孤独な戦士の心を描いた哲学的でやや男のロマンにあふれた歌詞になっていますね。

作風自体は前作の流れに乗っかっていますが、今回はその中で加工ボイスを取り入れたりツインボーカル体制を取ったり、今までにないタイプの曲に挑戦したりとまた新しい一面を見せてくれていますね。こうみると確かにメンバーが語っている通り、「貪欲さ」というのが前面に押し出された作品になっていると言えるでしょう。

昔の彼らとは明らかにスタンスそのものが変わってきていると管理人は思う訳ですが、ミュージシャンとしてこういう挑戦心や貪欲さというのはとても大事な部分だと思いますし、自分の得意分野やファンに望まれている曲というのもちゃんと理解している節があるのでここ数作は新しい風を感じさせつつ何だかんだでうまく作品をまとめていますね。

今作も挑戦心に溢れながらそういった配慮も忘れていないバランスのとれた作品です。

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