DICTATOR        (2011)                                             

90点                                          

1.深

2.奈落の底

3.Dictator

4.Master

5.インフィネイト


ヴィジュアル系バンドであるDIAURAの1srミニアルバム。

昨今(2013年現在)のヴィジュアル系シーンは相も変わらず様々な音楽性を持ったバンドが登場しています。今まで多かったDir en greyフォロワーからDELUHIフォロワーともいうべき高度な演奏スキルを武器にしたバンドが増えてきていますし、ゴールデンボンバーやシドのようにお茶の間にも受け入れられているバンド等それぞれの路線が多種多様と言える有り様を見せています。

で、管理人含め昔ながらのヴィジュアル系を愛してやまない人々の状況ですが、このサイトでも取り上げたVersaillesは活動休止。UNDER CODEの代表KISAKIが自ら率いる凛は無期限活動休止。同事務所所属の由緒正しいコテ系ヴィジュアルの継承者であったMegaromaniaは解散、ラウド系の中にもヴィジュアル系の王道を色濃く残していたOZも解散と主要バンドが次々と消えて行っている状態となっています。

そんなコテ系ヴィジュアルが劣勢となっている中で現在頭角を表してきているのが、 「独裁」をコンセプトに掲げる4人組のバンドDIAURAです。結成は2010年と今が伸び盛りのバンドですが、彼らの大きな特徴と言えばいい意味で新人らしさを全く感じさせない所でしょうか。ネットリとしながらも安定感のあるボーカルyo-kaの歌唱、往年のヴィジュアル系ファンのツボを知りに知り尽くしているとしか言いようのないある種「王道ヴィジュアル系の模範解答」というべき楽曲群は必ずや90年代〜2000年初頭のヴィジュアル系を愛していた人にはクリーンヒットすること請負で、好きな人にはたまらないものがあると思います。

今やこの手のバンドもメタル要素を多分に含んだバンドが増えていますが、彼らは音作りや楽曲なども決してメタルに傾倒している訳ではなく純粋に昔懐かしな「ヴィジュアル系ロック」をやっています。そこが今の時代は返って大きな個性と言えるでしょう。     ここまでピュア度の高いヴィジュアル系バンドは管理人も本当に久々に出会ったという感じでして、否が応でも期待したくなるバンドですね。ファンの事を「愚民」と称しているあたり、LUNA SEAやPIERROTあたりの思想と通じるものがあるような気がします(苦笑)

さて、今回レビューするDICTATORは彼らが最初にリリースしたミニアルバムでして現在はこの5曲に一曲追加された2ndプレスが再販されています。管理人はこの1stプレスしか持っておりませんので今回はこちらのレビューとなります。

今作の内容はというと初めてのまとまった音源とはとても思えないほどに安定しているというのが率直な所ですね。往年のヴィジュアル系ネタを上手く自分流に調理してできあがったと思われる楽曲は真新しさや奇抜さは当然皆無なわけですが、昔からのヴィジュアル系フリークを引き付けるには充分過ぎておつりがくるほどの出来となっています。

風のなびく音と幻想的なシンセ、シリアスなピアノがダークな雰囲気を演出するインストの#1.深から退廃的なギターリフと神経質なギターのアルペジオ、間に挟まる耽美なピアノがいかにもヴィジュアル系なミディアムテンポの#2.奈落の底へ。昔のLaputaや黒夢などの名古屋系の雰囲気が漂っていますしサビもピアノを交えてシリアスで仄暗いメロディーを壮大に聞かせてくれるという王道まっしぐらな展開は、聞いていて本当に気持ちいいですね。

表題曲である#3.Dictatorは叩きつけるような不穏なリフと「セイ!!、セイ!!」と煽るようなシャウトを中心に展開する楽曲で、このシャウトがまたグロウルなどではなくPhantasmagoriaの戮に代表されるようなヴィジュアル系の楽曲特有のシャウトなのがわかる人にはわかる懐かしさ満載ですね(笑)アグレッシブな出だしとは裏腹にサビはヴィジュアル系らしいメロディアスメロディー、途中では語りの登場とこれもわかっているな〜という感じです。#4.Masterは彼らのライブ定番曲にして今作随一のキラーチューンとも言える疾走チューン。ザクザクしたリフにPlease call my masterという語りから線の細いシャウトを合図としてリフと共に猛烈に疾走。この出だしがもうカッコ良すぎてツボですね(苦笑)がなるようなボーカルと疾走部分を絡めてクリーンと「オイ!!」というシャウトを交互にかけあい、サビは懐かしさ満載の絶品メロディアスメロディー。シンプルでメロディアスなギターソロ、ラストのサビ前はピアノが挟まりバラード調になり再びバンドサウンドと共にサビへ。ラストは語りをバックに畳み掛けyo-kaの綺麗な裏声をバックに再び疾走とヴィジュアル系の楽曲に詰まったカタルシスを全部乗せしたかのようなお手本通りかつ職人技というべき見事な楽曲です。管理人的には文句なしに2011年ベストチューンでした(笑)

#5.インフィネイトはクリアなシンセとタメの効いたバンドサウンドがこれまた懐かしいメロディアスナンバー。シンセを多用した一切ひねりのない一昔前の白系やソフビ系あたりを思わせるド直球なメロディアスナンバーで、yo-kaの裏声が綺麗に映えていますね。これも本当に懐かしい感じで安心感があります。

あまりにも模範的すぎて「欠点が見当たらないのが欠点」と言ってしまってもいいぐらいの王道なヴィジュアル系の楽曲が並んだ作品になっていますね。一曲一曲が非常に高品質でなおかつ安定感もあるため上記でも触れた「新人らしさ」を全く感じさせないのがこのバンドの恐ろしい所です。おそらく相当好きで研究したんだろうなというのが楽曲からひしひしと伝わってくるのが伺えるのも、昔からのヴィジュアル系ファンから見ればかなり好印象でしょう。

裏を返せば楽曲が良くも悪くも古臭いとも言えるため昨今のバンドが好きな方よりも90年代のヴィジュアル系が好きな方向けと言えるバンドですが、今後どこまで行ってくれるのかが管理人的にはとても楽しみなバンドです。

GENESIS       (2012)                                            

95点                                         

1.a genesis of the end

2.TERRORS

3.Imperial Core

4.二つの傷跡

5.DEAR RULER

6.禁止録

7.アナザゲイト

8.残月の灯

9.Lost November

10.an Insanity(Re-recording)

11.EVER


ヴィジュアル系バンドであるDIAURAの1stフルアルバム。

ヴィジュアル系の王道のなんたるかを確信犯的に盛り込んだ楽曲でヴィジュアル系ファンを虜にしているDIAURA。前作のミニアルバムも新人とは思えない余裕を見せつけ、「愚民化計画」の名のもとに精力的なライブやリリース活動を展開していきます。こういういかにもってスタイルはやっぱり90年代の熱狂的ファンの多かったバンド(Dir en grey、PIERROT等)を見てきた人にはウケるんでしょうね。

そして、前作から1年を経てリリースとなったフルアルバムが今作であるGENESISです。今作も相変わらずなヴィジュアル系の模範解答揃いの楽曲オンパレードで、純粋に楽曲のクオリティが高いのはもちろん「この曲はこのバンドっぽいかな・・・」などネタ元を探したり想像したりするとより一層楽しんで聞けるアルバムになっているのではないでしょうか。

ちなみにこちらも現在は2ndプレスが販売されており、2ndプレスは堕落と雨を含めた12曲構成となっています。こちらも管理人は1stプレスの方しか持っておりませんので、今回も1stプレスのレビューになります。

足音とノイズから語りと幻想的なシンセ、打ち込みとギターが期待感を煽るインストの#1.a genesis of the endからシャッフル・リズムを取り入れたメロディアスナンバーの#2.TERRORSへ。どことなく初期〜中期のDespair's Rayっぽい洋楽のへヴィロック的な質感を放っていますが、サビメロは相変わらずメロディアスですね。このサビメロはどことなくPIERROTっぽい印象です。ちょっとピュアな王道からずれた曲のため一発目でこれというのは少し意外なところですが、これはこれでいいんじゃないでしょうか。

#3.Imperial Coreは耽美なピアノ音からチャカチャカと走り出すコテ系の王道なメロディアスナンバー。この所々挟まるピアノがダークで耽美な質感を出していて秀逸ですし、サビメロもシリアスかつ王道なメロディアスさとお手本のような過不足ない無駄のなさが光る楽曲です。管理人的にサビメロのyo-kaの裏声が特にツボです。#4.二つの傷跡はサビから始まるクリーンなギターとタメの効いたバンドサウンドがこれまた王道なメロディアスナンバー。特にこの適度にチャカチャカしたギターが懐かしさ満載で、初期のLUNA SEAやDir en greyっぽい質感を放っていていいですね。ギターソロも結構ピロピロしながらもメロディアス重視で好印象です。

#7.アナザゲイトは北欧メタルなシンセとへヴィリフからチャカチャカと走り出すメロディアスナンバー。グロウルとクリーンボイスを交互にかけ合わせながら走り、サビメロはツタツタで疾走してJanne da arcに通じるクサキャッチーなメロディーを聞かせてくれます。間奏はシャウトで煽るパートもありと展開の王道さもさることながらJanne da arc好きな管理人にとってはサビメロがまたツボ以外の何物でもなく(苦笑)、今作では一番のお気に入りの曲です。#8.残月の灯はシンセやピアノが壮大でダークな世界観を演出するバラード。メロディーも程よい哀愁が感じられ、いかにもヴィジュアル系な歌詞とこれも王道以外の何物でもない訳なんですが(笑)、過去のバンドの同系列な曲と比較しても引けを取らない出来栄えだと思いますね。

#9.Lost Novemberは鐘の音とクリアでメロディアスなサビから始まる白系の王道なメロディアスナンバー。最初のサビメロを聞いた時点で管理人は撃沈するほどのツボな曲でして(苦笑)、所々のグロウルの使い方やシンプルなギターソロ、ピアノとボーカルで切々と歌うバックでの語り、ラストのサビメロの転調とヴィジュアル系ファンの心理を誰よりも知り尽くしていると思える彼らならではの佳曲です。#10.an Insanity(Re-recording)は彼らのデモテープ音源の再録で、ギラつきザクザクとしたギターリフと共にアグレッシブに疾走する暴れ曲。グロウルも交えてがなるように歌うボーカルと「オイ!!」と煽るようなパートを挟み王道メロディアスなサビメロへ。最早出尽くした感のある展開の曲ですがサビメロが非常に綺麗で質は文句なしに高いため許せてしまいますし、妙な安心感を覚えます(笑)

#11.EVERはキャッチーでメロディアスなサビメロから始まるメロディアスナンバー。疾走感もありますし、90年代でいうSOPHIAあたりのソフビ系っぽいキャッチーさが好き物にはたまらないのではないでしょうか。ラストに相応しいスッキリした曲ですし、こういう締め方も往年のヴィジュアル系らしい手法をそのまま取っていますね。

ほとんどの楽曲に最早出尽くしたかのような古臭さを感じるもののそのクオリティは当時のバンドと比較しても勝てるんじゃないかと思うほど高く、非常に純粋で高品質なヴィジュアル系ロックを堪能できるアルバムになっていますね。ここまでヴィジュアル系を、往年のヴィジュアル系ファンが望むものを知り尽くした楽曲を作り続けるバンドを管理人は他に知りません(苦笑)

相変わらずソツがなさ過ぎてフレッシュさを感じさせないのが可愛げない所でもありますが(苦笑)、いくら真似事と言われようとも極めれば本家を超えたと言われる典型ですね。

1stアルバムながら既に完成された、管理人の墓の中まで持っていきたい名盤です。

王道好きなヴィジュアル系ファンはもちろん、特に90年代のヴィジュアル系バンドが好きな方は騙されたと思って是非聞いていただきたい所です。

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